日本学校歯科医会が第74回総会を開催,中田郁平氏を次期会長に選出

 


円内は左から,代表会員に対してこれまでの会務運営への協力に感謝を意を表する松島現会長と,力強く決意表明する中田次期会長.

 社団法人日本学校歯科医会(松島悌二会長)は3月18日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第74回総会を開き,任期満了に伴う役員選挙で現副会長の中田郁平氏を次期会長に選出した.また,学校歯科医の資質と社会的信頼の向上を目的とした「学校歯科医生涯研修制度」を制定した.
 「生涯研修のさらなる整備と充実」を表明している中田氏が次期会長に決まったことで,今後,研修制度は加盟団体の実情などを踏まえながら,将来的にはアドバンス研修といった一段階上の研修の創設も見据えて検討がなされていくものと思われる.

学校歯科医生涯研修制度規則制定について
 第1号議案「平成21年度事業計画」,第2号議案「平成21年度収支予算」(いずれも賛成多数につき可決確定)に続き,第3号議案として「学校歯科医生涯研修制度規則制定の件」が上程された.はじめに丸山進一郎専務理事は,上程理由として「すべての学校歯科医が歯科医師としての専門性を活かしながら教育者としての資質を備え,積極的に学校歯科保健活動を推進し,生涯にわたってその資質の維持と向上を図り幼児,児童生徒の歯・口腔の健康増進に貢献することを目的とする」と研修制度の理念について述べるとともに,研修の種別は「学校歯科医としての最低限の資質を担保するための基礎研修とする」とした.その上で研修の実施要領は,「学校歯科保健の概念」「保健教育」「保健管理」「組織活動」の4つの項目の受講を必須とすること,日学歯が作成するテキストを資料として講義がなされること,研修時間はおおむね3時間とすることなどを施行細則に定める,と説明した.
 これに対し,代表会員から「研修を受けなかった場合にペナルティーはあるのか」「当初検討していた認定学校歯科医制度を継続審議してもよいのではないか」といった意見が出たが,執行部は「全会員の参加がのぞまれるが,現時点では会員の自主性に委ね,理念を遂行していくために研修制度はシンプルな形にした」「4月1日から施行していく中で,不都合があればその都度見直していく」との意向を示し,採決の結果,賛成多数により可決確定した.
 日学歯が学校歯科医の研修制度について長年検討を重ねてきた理由は,学校歯科保健の現場でみられる様々な課題や問題が背景にある.これについては,『日本歯科評論』2009年2月号において「学校歯科医の今後のあり方」と題した論文を中田副会長が寄稿し言及している.この中で中田副会長は,「検診精度の向上」「学校歯科医とかかりつけ歯科医の連携」「学校歯科医の資質の向上」の3点が主な課題であるとし,生涯研修制度の創設は学校歯科医の資質向上策の一環であり,全学校歯科医のレベルの底上げなどを狙いとしていることを明らかにしている(詳しくは『日本歯科評論』2月号を参照していただきたい).また,日学歯の会員ではない学校歯科医も多数存在するとみられるが,「スキルアップのための様々な研修を行う魅力ある日学歯」をアピールして組織率を向上させ,“すべての学校歯科医”のレベルアップにつなげたい,との思わくもあると思われる(なお,日学歯の正会員は約24,000人).

役員選挙について
 第4号議案は現役員の任期満了に伴う「役員選挙」が上程され,会長候補に現副会長の中田郁平氏と東京都学校歯科医会会長である櫻井善忠氏の2名が立候補した.所信演説の中で中田候補は「組織改革と生涯研修のさらなる整備・充実を図る」と訴えたのに対し,櫻井候補は「世の中がたいへん厳しいときに,研修制度は混乱を招くもので尚早だと考える」と現時点での研修制度施行に反対する姿勢を述べ,現状認識と今後の事業展開の違いが選挙の争点となった.
 代表会員による無記名投票の結果,投票総数123票で,中田候補98票,櫻井候補25票により中田候補の当選が決まった.
 当選を果たした中田候補は,「これまで先人の先生方が荒れ地を開拓して整地にし,水をまきようやく“生きる力の芽”が出てきたところである.この芽を潰さずもっとよい芽を育てていくために尽力していく」と強い決意を表明するとともに,「会員の先生方のますますのご理解・ご協力をお願いしたい」と挨拶した.
 また幹事には,添田 廣氏,川越文雄氏,宮崎禎之氏の3名が立候補したが,定数内であるため無投票で議決を経て承認された.
 なお,新役員の任期は本年4月1日から平成23年3月31日までの2年間.

(2009.3.30)


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