日歯が第162回代議員会を開催

 


円内は左から大久保満男会長,石井みどり参議院議員.大久保会長は,任期満了を迎えるにあたり,これまでの3年間の活動について総括するとともに,「第2期も歯科界のために与えられた職務を全うしていきたい」と決意を述べた.

 日本歯科医師会は3月12・13日の両日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第162回代議員会を開催した.開催前に爆破予告があり,警備体制が強化されての開催となったが,平成21年度予算関係を中心に11議案について活発な議論が行われた.
 まず来賓として出席した石井みどり参議院議員(自民党),大久保潔重参議院議員(民主党)から口腔保健法(仮称)について報告がなされ,成立に向けてお互いに議論し合いながら良いものを作っていきたい,との意向が示された.
 大久保満男会長による挨拶では,平成20年度の診療報酬改定について「歯科医療費は増えているが,まだこの状態では満足していない」と語り,昨年からの経済状況の悪化が歯科界にどのような影響を与えるかを危惧し,「今後はわれわれの役割を国民にアピールし,責任を持って職務を全うしていきたい」とした.

議案審議――次期会長に大久保現会長が承認さる
 一般会務報告,社会保険関係報告,会計現況報告の各種報告が行われた後,議案審議に入った.「社団法人日本歯科医師会広報調査室規則及び器材薬剤室規則の廃止について」や「日本歯科医学会規則の一部改正について」など11の議案が上程されたが,すべて賛成多数により可決された.第11号議案「役員選挙」では,すでに会長選挙により選出された大久保満男現会長が,賛成多数によって次期会長に承認された.承認後の挨拶のなかで大久保会長は「歯科界の現状を変えるために,会員と共に困難な課題に取り組んでいきたい」との抱負を述べた.
 また,次期監事も選出された和田明人氏(徳島県),一志忠廣氏(長野県),矢崎秀昭氏(東京都)の3名が承認された.

緊急動議審議――朝日新聞社への抗議文を採択
 予定されていた11議案が可決された後,沖縄県の嶺明彦代議員から緊急動議が提出された.内容は,2月27日付の『朝日新聞』の記事に対する抗議文の採択で,「公正さを欠いた記事で,厳重に抗議する必要がある」と提案理由を述べた.議案として取り上げた結果,賛成多数を得て抗議文が採択された.抗議文の内容については後日精査し,各代議員にも郵送される(日歯は5日に抗議文を朝日新聞社へ提出済み).
 
 なお,続いて各地区代表事前質問と個人事前質問が行われたが,その質問の一覧は下記のとおり.
○地区代表事前質問の一覧

中国地区「レセプトのオンライン義務化について−とくに対応出来ない会員への対策について」
東北地区「レセプトオンライン化時における代行請求について」
近北地区「レセプトオンライン請求について」
東海地区「日本歯科医師会の医療政策について」
北海道地区「日歯の地方における条例制定への姿勢について」
四国地区「『医療安全にかかわる課題と取り組み』について」
関東地区「歯科衛生士の確保について−『野心のある者,歯科に来たれ!」
東京地区「公益法人制度改革に伴う日歯福祉共済制度の在り方について」
信越地区「診療報酬の財源について」
九州地区「厚生労働省から基金本部への情報提供に対する日本歯科医師会の対応について」

○個人事前質問の部門ごとの一覧

広報関係……2問,学会関係……1問,中医協・診療報酬関係……3問,医療保険・制度関係……4問,地域保健・
産業保健関係……4問,学術・生涯研修関係……4問,国際渉外関係……1問,調査関係……2問,医療管理・
税務関係……7問,厚生・会員関係……1問,その他……2問

 これらのなかから一部を抜粋して概要を紹介する.

レセプトオンライン義務化についてーとくに対応出来ない会員への対策について(中国地区代表/林 伸伍代議員)
 平成23年4月より実施されるレセプトオンライン化制度に対応出来ない会員が多くいるが,その対応について下記にいくつか質問する.

(1) レセプトオンライン義務化の実施により,対応できない医療機関は「保険医療機関」の指定を取り消されることになるのか.
(2) もし,「保険医療機関」の指定が有効であれば「療養費払い制度」の適応は可能か.
(3) 現在,柔道整復師などの請求は患者への療養費払いが原則だが,実際には「第三者受領委任」方式により,現物給 付と同じく「施術療養費支給申請書」を国保連合会に提出し,審査の後に支払いを受けているが,これもレセプトオンライン方式になるのか.

 近藤勝洪副会長:(1)レセプトオンライン請求義務化は,省令改正に基づくものなので,保険医療機関の指定を受けていれば,その取り消しには当たらない.(2)現行の保険給付は現物給付が原則なので,いわゆる「療養費払い」は保険者の理解が得られなければ難しい.(3)今回のオンライン請求の中に柔道整復師は入っていないと理解している.この部分の取り扱いについては今後検討していきたい.
 
レセプトオンライン化時における代行請求について(東北地区代表/金子 振代議員)
 「手挙げ方式」を主張している現在,代行請求を考えることは難しいが,第三者機関の支払基金,国保連合会等との話し合いの場も必要ではないか.代行請求には多くの問題があるが,今後の対応について伺いたい.
 稲垣明弘常務:現在,代行業についての話し合いは行っていないが,さまざまな請求方法の中から代行請求を考えることは大事である.ただ,地方の歯科医師会では多大な負担を課せられることから,今後,時期をみて検討していきたい.

レセプトオンライン請求について(近畿北陸地区代表/森本清治代議員)
 レセプトオンライン請求について下記にいくつか質問する.

(1) レセプトオンライン請求の完全義務化撤廃について,今後どのように強力に推し進める予定か.
(2) もし義務化が強行されるのなら初期費用等を含め,政府に財政的支援を要望する用意はあるのか.
(3) 日歯レセコンの使用料は月額19,800円だが,NTTデータに払いすぎではないか.登録料50,000円に関しても適正価格なのか.また,日歯レセコン利用者数が推定と大きく違った時の価格についてはどう対応するか.
(4) 政府は実施にあたり,費用として3点の電子化加算を充てているが,当然これでは不足なので,これらの交渉も行われているか.

 近藤勝洪副会長:(1)2月27日に自民党社会保障制度調査会医療委員会が開催された.同委員会に三師会は出席できなかったため,委員会に出席する議員にレセプトオンライン完全義務化撤廃をお願いした.(2)行政への財政的な支援の要望はやらなければならないこと.今は義務化撤廃で推し進めているが,一定の方向性が見えた時点で対応しても間に合うと考えている.(3)未導入者に対して行った「いくらなら負担できるか」というアンケートの結果に基づき,この額に決定した.登録料50,000円に関しては,理事会でさまざまな意見が出たが,先生方に出していただくには適正な額と考える.ただ,NTTデータとの話し合いの中では,今後ユーザー数が増えれば使用料が引き下げられる可能性はある.(4)診療報酬として3点が認められているが,IT化を進めるために電子加算を行うならば診療報酬とは別の財源を使うべきだと考えている.

診療報酬の財源について(信越地区代表/五十嵐 治議員)
 大久保会長が会長選挙のマニフェストに掲げた「歯科医療の再生に向けての検討会」の具体的な内容と,今後の財源確保についての考えを伺いたい.
 大久保満男会長:まずは現在の歯科医療の点数がいかに低いか,歯科医療費がいかに安いかを具体的な政策としてアピールしていくことが大事.そのために,この検討会は重要である.財源の確保については国の政策の問題なので,歯科医療がいかに大切であるかを政治家にしっかり理解してもらうためにも,検討会の内容を早急に明確なものにしていきたい.


(2009.3.19)


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