東京歯科保険医協会の「メディア懇談会」から

 
 去る1月20日,東京歯科保険医協会(中川勝洋会長)による「メディア懇談会」が高田馬場の同協会会議室において開かれた.これは歯科を中心とした出版社や新聞社の記者および編集者と意見交換を行うもので,2008年3月から始まり6回目となる.
 今回の内容は,(1)都内歯科医院の実情関連,(2)歯科技工物訴訟関連で,(1)については『東京歯科保険医新聞』第460号(2009年1月1日発行)に載った「随想/神田川界隈:1日に1軒が廃院となる東京の歯科事情」(目黒区・松島良次氏)を資料に状況説明を行った後,意見交換に入った.これは東京都の歯科保険医療機関の新規・遡及・廃止の推移を2001年度から7年度まで追った結果,表1にみるとおり廃止が激増し,2007年度にはトータルで−82施設にまで至ったとするものである.廃止の理由は「経営不振や病気・高齢のため開設者を変更」したり,「移転」や「法人化」などが挙げられるが,個別にみると,経営環境が最悪の状態にある診療現場の悲惨な事例もあるという.廃止に関する地域別(23区,都下)分析などの詳細については別途進めたいとした.これは保険医療機関数の増減だが,歯科医療施設そのものは各年12月末の概数で表2のように若干伸びている.
 (2)については,歯科技工所の現状,歯科技工士の免許交付数と就業者数(1997〜2006年),平成20年度の歯科技工士学校入卒者アンケート集計,そして中国への技工物委託問題である.歯科技工士は1997年(平成9年)〜2006年(平成18年)の10年間に免許の交付を受けた者24,635人のうち,2006年現在歯科技工士として就業している者は5,708人で,離職者は18,927人(77%)に達するという.また入学者については,アンケートに答えた65校のうち定員を満たしたのは8校のみで,定員達成率の低いところは0.15(定員100名で入学者15名)がみられるし,募集停止したところも3校あった.そして中国製技工物の問題については,様々な意見が出た.ドイツはすでに中国への発注を認め製品の購入を積極的に行っているようだが,ドイツは以前から国が後押しして中国との経済交流を進めてきており,日本はいわゆる政経分離で対応してきたため民間が中心となって経済交流を膨らませた経緯もある.政府として“規制”できない弱味があるのかもしれないが,問題の背景には様々な要因が見え隠れし,法解釈による対応だけでは並行輸入問題と同様,単純には割り切れないものとも思われた.しかし,医療保険にみる歯科治療の低評価是正,安全で優良な技工物の確保,歯科技工士の生活安定化は,国民に納得のいく歯科医療を提供するために必須のものであるところから,歯科界として一つ土俵で真剣に,しかも早急に考えなければならない大きな課題であるだろう.
 いずれにしても,本づくりにあたる立場として有意義な懇談会となった.
 なお,東京歯科保険医協会への連絡は以下へ.
 「東京都新宿区高田馬場1-29-8新宿東豊ビル6階 Tel03-3205-2999」


表1 歯科保険医療機関の新規・遡及・廃止の推移(東京都)
  2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
新規 314 344 315 304 309 276 268
遡及 272 289 263 330 300 282 357
廃止 −424 −460 −443 −514 −559 −510 −707
増減 162 173 135 120 50 48 −82
(『東京歯科保険医新聞』より)

表2 歯科診療所の推移
  H13(2001) H14(2002) H15(2003) H16(2004) H17(2005) H18(2006) H19(2007)
全国 64,453 65,267 65,982 66,701 67,250 67,441 67,879
東京 10,151 10,299 10,371 10,460 10,531 10,524 10,571
(各年12月末の概数)


(2009.1.27)


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