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「若い歯科医師が未来に希望を持てるよう,献身的に努力していきたい」と挨拶する大久保満男会長(円内左).円内右は来賓として挨拶した石井みどり参議院議員. |
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日本歯科医師会は9月11・12日の両日,東京・市ヶ谷の新歯科医師会館において第161回代議員会を開催し,平成19年度決算関係を中心とする9議案について活発な議論を行った.
挨拶に立った大久保満男会長は,診療報酬改定やレセプトオンライン化,公益法人制度改革などの諸問題における日歯の考え方を概説.また,去る8日に開催された厚生労働行政の在り方に関する懇談会で委員の大熊由紀子氏(国際医療福祉大大学院教授)が,「日本の医療費の多くが診療報酬の水増し請求によるものというのは公然の事実」と発言した件に触れ,「何を根拠に言っているのかわからない」と強く抗議した.
来賓として出席した石井みどり参議院議員,永山一行日歯連盟会長も挨拶を述べ,そのなかで石井氏は「解散総選挙となった際,マニフェストに口腔保健法の成立を入れたい」との考えを示した.
議案審議――「除名」は総会の議決を得ずして可能に
一般会務,社会保険関係,会計現況の各種報告が行われた後,議案審議に入った.全部で9つの議案が上程されたが,第1号議案「社団法人日本歯科医師会定款等の一部改正及び社団法人日本歯科医師会裁定規則の制定について」では,(1)会員に対する処分内容に従来の戒告と除名の中間的処分として「会員の権利の一部停止」を追加,(2)除名処分を総会の議決事項から外し代議員会のみの議決事項とする,(3)除名処分は多数決ではなく出席者の2/3以上の賛成が必要,(4)除名された者は5年経過後に理事会の議決を経て再入会できる,などの改正案が提示され,賛成多数により可決された.
また,第3号議案「新歯科医師会館及びその敷地の管理規則の一部改正について」では,4日に行われた東京都歯科医師会代議員会と同様に「新歯科医師会館」の名称を「歯科医師会館」に変更することが提案され可決された.これにより10月1日より「歯科医師会館」に名称が変更となる.そのほかの議案についても執行部提案どおりすべて可決され,代議員会後の総会でも承認された.
なお,続いて各地区代表事前質問と個人事前質問が行われたが,その質問の一覧は下記のとおり.
○地区代表事前質問の一覧
信越地区「歯科医師による医科麻酔について」
東京地区「日本歯科医師会のめざす公益社団の姿とは」
東北地区「公益法人制度改革への対応について」
東海地区「歯科技工士問題について」
中国地区「歯科技工士にかかわる諸問題について」
北海道地区「唾液検査の保険導入について」
関東地区「新しい金属材料の開発について」
四国地区「金銀パラジウム合金価格の逆ザヤ解消について」
近北地区「規制改革会議そして混合診療について」
九州地区「社会保障費2,200億円削減という医療費抑制策の中での歯科界の新たな選択肢を問う」
○個人事前質問の部門ごとの一覧
医療管理・税務関係……7問,厚生・会員関係……3問,器材薬剤関係……1問,
広報関係……3問,学会関係……2問,中医協・診療報酬関係……5問,
医療保険・制度関係……6問,地域保健・産業保健関係……2問,
歯科医師需給関係……3問,その他……3問
今回の地区代表事前質問と個人事前質問では,特にコ・デンタルスタッフの養成や待遇改善を要望する意見が多かったが,そのなかから一部を抜粋して概要を紹介する.
歯科技工士にかかわる諸問題について(中国地区代表/仲佐善昭代議員)
歯科技工士教育機関への平成20年度入学者数は定員2,343人中1,454人(入学率62%)となっており,この数年間で10校ほどの廃校・廃科となっている.この問題は歯科技工士界だけの問題ではなく,歯科界の問題として日本歯科医師会が積極的に取りあげるべき時期に来ていると考え,下記にいくつかの質問をする.
(1) 全国歯科技工士教育協議会では,歯科技工士の修業年限延長と資格試験統一化を要望しているが,これについての日歯の見解は?
(2) 日本歯科技工士会は将来的に直接請求を模索していると聞くが,このことについて見解は?
(3) 患者サイドから「歯科技工士の顔が見えない」「歯科医療の流れのなかに歯科技工士がいない」という声を聞く.歯科技工士の存在の認知のため,歯科技工士の生き甲斐のためにも何らかの対策が必要と思うが?
(4) 歯科医師会立歯科技工士専門学校が要望している日歯,日技,全技協の三者による定期的な合同協議会設立の予定は?
高木幹正常務理事:(1)これまで厚労省などで検討している.日歯としても関係団体と慎重に協議しながら前向きに進めていきたい.(2)直接医療ではないため,現段階では困難.(3)歯科技工士法は「対面行為をしない」という前提で制定されたため,対策は困難.(4)9月24日に非公式だが,打ち合わせ会を行う.
唾液検査の保険導入について(北海道地区代表/西 隆一代議員)
唾液には,血液と同様にたくさんの生態情報が含まれている.公衆衛生部門での唾液検査の活用の展望と,保険枠内に検査項目として導入する意向があるか,意見を伺いたい.
箱崎守男副会長:医科では,血液検査から侵襲の少ない唾液検査へ移行する動きがあるが,保険導入するにはエビデンスが必要.課題はあるが,日本口腔検査学会や日本歯周病学会,医科の検査学会などと連携して前向きに進めていきたい.
歯科衛生士不足への対応について(東京都/櫻井善忠代議員)
今年の歯科衛生士の入学者数は,定員7,353名中5,891名(入学率80%)となっており,歯科衛生士が不足している.歯科衛生士法第2条の予防処置の項における「直接」「正常」の2カ所の文言削除は,厚生科学研究班の報告で根拠が担保されており,早急に政治決着で対応できるか伺いたい.
歯科衛生士の業務拡大について(埼玉県/谷野日出人代議員)
日本歯科医学会の歯科衛生士業務に関わる検討会がまとめた「歯科衛生士の診療の補助業務についての考え方」では,かなりの業務見直し,拡大が盛り込まれたという.日歯はこれをどのように活用していくのか?
歯科衛生士需給問題について(神奈川県/杉山義祥代議員)
何らかの理由で退職した歯科衛生士の数はかなりの数にのぼると予想されるが,歯科医療の現場から長期間離れてしまっている等の理由から再就職する歯科衛生士は非常に少ない.日歯においても職場復帰できる環境作りを積極的に講じる必要があると思うが,見解をお願いしたい.
高木幹正常務理事:「直接」「正常」の文言削除は,歯科衛生士の質の維持ならびに安全対策が担保されたうえで検討が必要.「歯科衛生士の診療の補助業務についての考え方」はすでに厚労省に提出した.歯科衛生士の未就業者は約60%にのぼり,この人材の活用に努力していきたいと考えている.
日本歯科医学会会長の発言について(大阪府/川野敏樹代議員)
去る7月13日,大阪で開催された日本歯科医療管理学会学術大会の特別講演において,江藤一洋日本歯科医学会会長が「あくまで個人的見解だが,補綴は保険給付の対象外としてはどうか」などと発言している.この発言に対する大久保会長の考え方を伺いたい.
大久保満男会長:私も議事録を読んで驚いた.これは経済財政諮問会議の考えに乗ってしまう発言であり,すぐに江藤先生を呼んで厳重に注意した.それに対し江藤先生も「軽々しい発言だった」と反省の弁を述べている.
再度・歯科医師需給問題並びに需要喚起について(大阪府/玉利行夫代議員)
第100・101回国家試験の合格率がそれぞれ74.2%,68.9%であった.さらに歯科医師養成校の定員割れ,特に私立歯科大学・歯学部では平均84.28%の入学率となっている.需要喚起を含めた日歯の考えは?
計画的な歯科医師養成と過剰対策(大阪府/三谷 卓代議員)
平成18年の大臣確認に沿って,大学入学定員のさらなる削減を行うのを機に,もっと計画的な人材養成が求められているが,国と共にどのような対策を考えているか?
優秀な若人が夢と希望を抱ける歯科界をめざして(沖縄県/高峰明彦代議員)
需給問題に取り組むことは重要であるとしても,その結果,魅力のない歯科界にしてしまっては将来に禍根を残す.この点についての見解と,今後の取り組みは?
箱崎守男副会長:文部科学省より,私立大学の歯学部定員削減分を医学部に上乗せすることを認める通知がなされた.今後は国立大学にもお願いしていきたい.厚労大臣と文科大臣に需給問題への対応をお願いするためアポイントを取っていたが,福田総理の辞任によって流れてしまった.今後,再度検討していきたい.
また,日歯戦略会議で「ビジョン2008関連レポート」をまとめ,そのなかで「歯学教育機関の機能分化」を提言している.それによると,「平成12年度から国立大学歯学部は,順次,大学の機能を従来の学部教育中心から大学院研究を中心とする大学院重点化改革を行った」そのため「その機能を大学院研究中心にし,将来的には博士・修士の養成に特化すべきである.そして,学士(歯科医師)養成については,基本的に大学院重点化(研究中心)を行っていない歯科大学・歯学部に主体的に委ねるべきである」とまとめている.
終身会員について
協議事項では,終身会員について議論の場が持たれ,まず堤 直文副会長から概要について説明がなされた.
堤 直文副会長:終身会員数は年々増加が予想され,平成29年には1,800人を超える(平成20年時621人).機構改革検討委員会での検討を踏まえ,終身会員の適用を(1)70歳に達した者(現行)→75歳に達した者(改正案),(2)30年以上本会の個人会員(現行)→35年以上本会の個人会員(改正案),(3)疾病等の理由による経済的困窮者は会費の減免を受けられるものとする(改正案),について意見をお聞きしたい.
三塚憲二代議員(山梨県):「35年以上」を「40年以上」(70歳は据え置き)にしてはどうか.「35年以上」では40歳になってから入会しようとなるのでは.
梅村長生代議員(愛知県):70歳の収入がどれくらいか調べるべき.負担を増やすと退会してしまうのではないか.ビジョンを示しながら検討してほしい. |
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