日歯第160回代議員会が開催

 


代議員会で挨拶をする大久保満男会長(左).右は,「政治の力を使わないと解決できないことがある」と,国会での精力的な活動を誓った石井みどり参議院議員.上程された全議案が賛成多数により可決確定された.

 3月13・14日の両日,東京・市ヶ谷の新歯科医師会館において,平成20年度の事業計画と予算などを議論する第160回日歯代議員会が開催された.挨拶に立った大久保満男会長は,診療報酬改定や医療制度改革,レセプトオンライン化などへの対応について解説し,任期最後となる次年度への意気込みを述べた.

 議事進行の前にまず,2月3日に辞任した太田謙司前常務理事の後任として,理事であった高木幹正氏の常務理事就任,岡田東洋志氏の理事就任が承認された.

 続いて,一般会務,社会保険関係,会計現況の各種報告が行われた.一般会務報告のなかで村上恵一専務理事は,公益法人制度改革への対応について「公益認定を受けるために準備を進めている」と,内閣府や法務省などと折衝を進めている現状を説明した.さらに,同改革の影響で「会長選挙が認められるとは考えにくい」「代議員会は社員総会として認められる」「福祉共済に規制がかかるかもしれない」と発言し,状況を改善するために議員などへ働きかけを強めていく考えを示した.

 その後,平成20年度予算関係を主とする9つの議案が上程されたが,すべて賛成多数により可決され,第1号議案「日本歯科医学会規則の一部改正について」の可決により,日本口腔病理学会と日本接着歯学会の専門分科会への加入が認められた.
 なお,続いて各地区代表事前質問と個人事前質問が行われたが,その質問の一覧は下記のとおり.
○地区代表事前質問の一覧
東海地区 「改めて歯科保健法(仮称)制定の可能性を問う」
中国地区 「指導・監査における医科と歯科の格差是正について」
東京地区 「歯科医療安全対策について」
信越地区 「特定健診・特定保健指導について」
北海道地区 「歯科医師の適正数について」
九州地区 「歯科衛生士養成について」
四国地区 「保健医療機関及び保険医等の指導及び監査について」
近北地区 「『歯科診療所における歯科保健医療の標準化のあり方等に関する検討会」開催経緯と今後について
関東地区 「社会保障カードについて」
東北地区 「『専門医の位置づけ』について」

○個人事前質問の部門ごとの一覧
歯科医師需給関係……3問,厚生・会員関係……2問,中医協・診療報酬関係……5問,医療保険・制度関係……8問,学術・生涯研修関係……1問,学会関係……2問,地域保健・産業保健関係……6問,その他……7問

 地区代表事前質問と個人事前質問のなかから一部を抜粋して概要を紹介する.

改めて歯科保健法(仮称)制定の可能性を問う(飯嶋 理代議員/静岡県)
 これまでの代議員会でも歯科保健法の制定について議論が行われてきたが,8020運動や政府の「新健康フロンティア」に“歯の健康力”が位置付けられたことにより,その地ならしがされてきたと思う.民主党でも歯科保健法の作成に着手していると灰聞している.今が制定のチャンスだと考える.
 大久保満男会長:臨床現場に即した法律になるかが問題.歯科医師の裁量権がなくならないようなものを作っていきたい.また,民主党の歯科保健法は特に相談を受けていないため,日歯は関知していない. 

歯科衛生士養成について(寺尾隆治代議員/佐賀県)
 少子化の影響もあり,歯科衛生士学校の受験数が減っている.これは,歯科衛生士の質低下につながり,ひいては歯科医療の質にも直結する.佐賀県では,看護学校には1校あたり1,500万円の補助金が出たが,歯科衛生士学校には全く補助金が出ていない.行政が,歯科衛生士養成を軽視しているのではないか.安心で安全な歯科医療を進めていく上で,歯科衛生士の力は不可欠であり,これに対する日歯の見解を問う.
 高木幹正常務理事:「臨床現場における歯科衛生士の就業数は不足している」との認識であり,厚労省や財務省などに補助金を要望している.また,未就業歯科衛生士の再雇用を促すため「リカバリー研修テキスト」を作成している.さらに,日本歯科医学会で歯科衛生士の業務範囲について検討しているところである.

歯科医師過剰問題について(和田明人代議員/徳島県)
 平成18年8月に文部科学大臣と厚生労働大臣の合意文書が出てから,具体的な動きはあるのか.

歯科医師養成数削減について(川野敏樹代議員/大阪府)
 大臣合意後,抜本的な解決の動きに向かっているとは言い難い.日歯の対応が見えてこない.

歯科医師需給問題ならびに需要喚起について(玉利行夫代議員/大阪府)
 歯科医療の需要を喚起するため,医科との連携を深めて,有病者の口腔ケア戦略を立ち上げる意向はあるか.
 箱崎守男副会長(一括答弁):自民党の社会保険委員会のなかに歯科のプロジェクトチームが設置され,11月に報告書が提出された.そのなかで,歯科医師のさらなる削減が必要と記されている.また,厚労省は4年に一度,国試の見直しを行っているが,その際に合格基準の引き上げを行うことを明示している.文科省も国立大学や歯学部に定員削減を要請しており,各方面から働きかけが行われている.
 和田明人代議員(追加質問):医科で不足している麻酔医に,歯科医師を充当するという考えはあるか.
 箱崎守男副会長:自民党のなかからもその意見は出ている.しかし,医師法と歯科医師法の絡みや三井記念病院での事故(研修中の歯科医師から全身麻酔を受けた患者が心停止)もあり難しい.

高点数医療機関への個別指導に対する日歯のスタンスは(北村 裕代議員/岐阜県)
 医療機関への個別指導は,高点数の医療機関が選定されているが,それでは保険診療中心の医療機関や補綴治療の診療比率が高い医療機関へ偏ってしまう.これに対する日歯の基本的なスタンスと,今後の方向性を示してほしい.

指導・監査の改善について(浅野薫之代議員/千葉県)
 高点数医療機関への個別指導は,「1件あたりの平均点数が高い医療機関は悪」と考えているとしか思えない.また,昨年10月に起きた会員の自殺と個別指導との関連をどう考えているか.
 渡辺三雄常務理事(一括答弁):高点数医療機関を選ぶという選定方法については,改めて厚労省に申し入れをしたい.また,自殺の理由を日歯では把握していない.

日歯会長選挙における選挙人選出方法について(須賀 均代議員/愛知県)
 次回の日歯会長選挙は,前回同様の選挙方法と聞いているが,選挙人の選出方法を再考すべきであると考える.次回の選挙人選出時の参考にするため,前回の各都道府県歯による選出方法を評価してもらいたい.
 大久保満男会長:どの都道府県歯も民主的な方法であったと思う.様々な選出方法があるが,それを決めたのも会員の意志.会員の意志を反映することが第一である.

夢みるこども基金問題に関する日歯の社会的責任について(富野 晃代議員/北海道)
 夢みるこども基金問題は訴訟問題に発展し,泥沼化している.この一因として,日歯が早期解決に向けた積極的調整に乗り出さなかったことを挙げざるを得ない.この問題に対する日歯の認識と社会的責任について,どう考えるか.
 箱崎守男副会長:基金の規約では「理事は日本歯科医師会会長」となっているが,経理が不透明なため「理事長に就任できない」と文書を提出している.現在は告訴中なので,何も言えない.しかし,会員から「金属をどこに提出すればよいか」と問い合わせがあるので,金属の回収については検討したい.
 大久保満男会長:ある市役所の窓口では,箱を置いて金属を回収しているところもあると聞く.それでは感染の危険もあり,混乱も予想されることから,日歯の責任として何らかの対策が必要と考えている.

 協議事項では,執行部より2つの事案が提案され,議論の場がもたれた.

地区割りの変更について
 堤 直文副会長(提案理由):現行の10地区の地区割りでは,地区間における厚生会員数の格差は最大で6.06倍にまでのぼり,その格差はさらに進む傾向にある.そこで,7地区案(格差は2.14倍)と8地区案(1.92倍)を提案する.これにより,日歯として地区説明等の出向回数の削減と旅費の節約にもつながる.また,慣例として行われている地区推薦役員の削減につながり,会務の活性化が図れると考える.
 高畑研祐代議員/青森県:日歯としてのメリットはあるが,地方の会員からすると交通経費が増大し,地区での会議に出席するのにも2泊3日といった日程を組まざるを得なくなる.

裁定審議会の権能,会員の処遇について
 堤 直文副会長(提案理由):定款等改正臨時委員会(田中秀夫委員長)より中間答申書が取りまとめられ,日歯定款における裁定審議会に係る条文改正案が作成された.そのなかで,(1)会員の処分に「戒告」「除名」のほかに「会員の権利の一部停止」を加えた,(2)本会から除名された者は,5年を経過した後,裁定規則(仮称)に従い,理事会の議決を経て再入会することができる,(3)総会において議決または報告しなければならないことから「除名処分」を削除した,などと改正されている.これについて意見をいただきたい.
 峰 正博代議員/三重県:日歯で除名処分となった場合,都道府県や郡市区では,その会員の位置付けをどうすればよいのか.
 溝渕健一代議員/京都府:5年経過しないと再入会できないというのは,もう少し柔軟にできないか.5年経ってしまっては再入会したくなくなるのでは.
 奥村弘一郎代議員/東京都:再入会の際には,理事会での議決のみではなく,代議員会での承認も必要ではないか.

 協議事項については,以上のような意見を踏まえ,今後さらに検討していくこととなった.本代議員会では前回のような混乱も特になく,予定時間より早く議事が進行したため,残り時間を使って公益法人制度改革の各都道府県歯における対応について説明がなされたが,「国の対応がまだ曖昧.国の方針が決まり次第,すぐに情報を伝えたい」(大久保満男会長)と述るのとどまり,閉会となった.


(2008.03.18)
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