中医協総会で医療経済実態調査に対する日歯の見解を表明

 
 本年6月に行われた第16回医療経済実態調査の結果(速報値)が10月31日に開かれた中医協総会において正式に報告されたが,日本医師会,日本歯科医師会,日本薬剤師会は,ともに見解を表明した.日本歯科医師会のそれは以下のとおりだが,支払側委員から「これらの原因として,歯科医院が増え競合激化したことも要因となっているのではないか」との指摘がなされた.これに対して渡辺三雄中医協委員(日歯社保担当常務)は「いま正確な数字は控えていないが,私のメモでは平成15年〜平成17年でみてそれほど増えていないと思う.調べてみる」とした.ちなみに,平成14年末の歯科診療所概数は65,267であったが,平成17年末では67,250(3%増),平成19年6月では67,722(3.7%増)となっている.


第16回医療経済実態調査結果速報に対する見解
日本歯科医師会
平成19年10月31日
1.はじめに
本調査は,医療機関における医業経営等の実態を明らかにする調査であり,次期改定の重要な検討資料であると考える.
個人立歯科診療所の大部分は無床診療所であり,その経営規模は調査年によって変わるとは考えにくいので,前回と比較した伸び率はそのまま経営実態の変化と考えられる.
個人立歯科診療所の収支差額には,院長報酬のほかに多くの計上されない費用相当分が含まれる.

2. 第16回医療経済実態調査結果速報における歯科診療所(個人)の収支状況(%は前回調査との比較)
医業収入は3,455千円で,前回比89千円の減収(▲2.5%)であった.
保険診療収入は2,984千円で,前回比92千円の減収(▲3.0%)であった.
医業費用は2,228千円で,前回比31千円の増額(1.4%)であった.
その結果,収支差額は1,229千円で,前回比122千円の大幅な減額(▲9.0%)となった.

3. 第13回〜第16回の4回の医療経済実態調査に見る歯科診療所(個人)の収支状況の経年的変化の分析(表1)
1) 医業収入は毎回減少している.
2) 特に保険診療収入は毎回減少している.
3) 医業費用は今回の1.4%の増を除き,大幅に削減している.
4) 上記の結果,大幅な経費削減にもかかわらず収支差額は減少し,今回は過去最大の下げ幅となった.
5) 個人立における収支差額(122.9万円)には,(1)院長報酬のほかに,(2)建物・設備等の改築・更新の費用,(3)借入金の返済,(4)所用積立金(院長の退職金,法定福利費相当分等)が含まれる.
借入金元本の年間返済額は272.3万円(月平均22.7万円).(本結果速報の109頁)
6) 収支差額から上記の(2)〜(4)を引くと,本調査の一般病院の勤務歯科医師の給与(99.3万円,同83頁)を大幅に下回り,歯科診療所の勤務歯科医師の給与(55.0万円,同86頁)のレベルに近づく.

4. まとめ
今後,医療安全をはじめとする患者への適切な歯科医療,さらに社会の求める高齢者への円滑な歯科医療提供のための体制整備,また歯科器械・材料費の上昇による経費の増加等,更なる費用の増加が見込まれるが,今回の医療経済実態調査における歯科診療所の収支状況の結果から,その診療所経営は極めて厳しい状況にあることが明確になった.
 国民への安全で質の高い歯科医療を提供するためには,歯科診療所の基盤整備が不可欠であり,次期診療報酬改定において適切な評価が必要である.


 以下に,医療経済実態調査に見る歯科診療所(個人立)の収支状況の変化の資料を示す(PDFファイルを開いてご覧ください).なお,グラフの色は編集部で付したものである.


PDFファイルを開いてご覧ください.


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(2007.11.01)
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