8月の日歯定例記者会見より

 


挨拶をする大久保満男会長とレセプトオンライン化への取り組みについて説明をする近藤勝洪副会長.

 日本歯科医師会は8月30日,東京・市ヶ谷の新歯科医師会館において定例記者会見を開催した.冒頭の挨拶の中で大久保満男会長は先の参議院選挙で石井みどり氏が当選を果たしたことについて,「歯科界の団結力を示せた」と評価.今後は診療報酬のプラス改定を目指して,国民から理解を得られるよう「歯科医療へのしっかりとした取り組みを示さなければならない」との考えを述べた.
 そのほか,裁定審議会の結果やレセプトオンライン化への考え方などが報告された.

内山文博日歯前専務理事を除名へ
 日歯は理事会で,贈収賄容疑で起訴されている内山文博被告(日歯前専務理事)と大友 好被告を「除名処分とする」ことを決定した.これは,21日に開かれた第4回裁定審議会の結果を受けてのもので,同審議会では「両名とも除名処分に相当する」との答申書をまとめた.日歯の定款第16条には「本会の体面をけがした者」は除名することができるとあるが,大久保会長は「(今回の事件は)体面をけがしていないとは到底言えない」と判断し,処分に踏み切った.
 正式には,代議員会に議案として上程し代議員の承認を得てから処分決定となる.9月の代議員会に間に合うかは議事運営特別委員会を経るので微妙なところであるが,現在議案作成の準備を進めているという.

レセプトオンライン化に関する現時点での考え方を発表
 日歯はレセプトオンライン化に対して,一斉義務化ではなく「手挙げ方式」にすべきとの考えを以前より示しているが,「一斉義務化反対の声がなかなか大きくならない」(近藤勝洪副会長)という.そこで,その考えを基本前提として,レセプトオンライン化および医療分野のIT化に関する現時点での日歯の考え方を発表した.
 その中でレセプトオンライン化については,(1)レセプトオンライン化への本会対応の全体像を一望できる設計図として「マスタープラン」の作成ならびにタイムテーブルを示す「ロードマップ」も併せて策定する,(2)レセプト電算処理(歯科)システムの今年度中の完成と円滑な普及を図る,とある.その一方で,(3)レセプトデータの目的外使用や情報漏洩などへの対策,(4)歯科診療における裁量権の確保,(5)レセプトオンライン化に潜む危険性の国民への周知,(6)すべての歯科医療機関が円滑に歯科診療を行うための具体的救済策事業が必要である,としている.
 また,医療分野のIT化については,「国による財政負担,税制面での優遇措置,診療報酬上のインセンティブ付与,等がなされるよう,関係諸機関に強く働きかけていく」との考えを示し,導入が検討されている「社会保障カード(仮称)」については,情報セキュリティなどの問題から「慎重な検討が必要である」とし,拙速な導入は容認できないとの姿勢を見せている.

日歯「テレビ会議システム」「衛星ライブ中継システム」の導入を検討へ
 日歯のIT化推進委員会は29日,中間答申書(第二次)を取りまとめ,そのなかで,都道府県歯科医師会とのネットワーク構築について「テレビ会議システム」「衛星ライブ中継システム」導入を検討するよう提言した.日歯は,早期導入は難しいが,システム導入による費用対効果などを考慮して検討を行っていくという.また,日歯内IT化状況については,メールサーバー等のシステムが老朽化していることから,早急にシステムの再構築に取りかかる方針が示された.

野村眞弓先生が日歯総研研究員(非常勤)に委嘱
 日本歯科総合研究機構は,日本医療経営評価機構(株)ゼネラルマネージャーならびに日本大学歯学部非常勤講師である野村眞弓先生を研究員(非常勤)として委嘱したことを発表した.任期は平成19年9月1日から平成21年3月31日まで.医療経済を中心に,統計的な分野について調査・研究・分析を行うほか,委託研究の企画も行う.

 そのほか,記者と以下のような質疑応答が行われた.
Q. 8月20日に開かれた,贈賄事件をめぐる関係者からのヒアリングではどういった意見が出たのか?
A. 被告人の弁護士からは「穏便な処分を」「裁判が終わっていないのに(除名)処分は早すぎる」といった意見が出たが,両被告人とも起訴状を認めている.さらに,裁定審議会の答申を踏まえ,定款に基づき処分を下した.
Q. 3年前の中医協にまつわる事件関係者は日歯として処分を下していないが,それとの整合性は?
A. 前回の事件が起きたにもかかわらず「なぜ?」という思いがあった.そのため,今回についてはどうしても厳しい思いがある.
Q. 厚生労働大臣と事務次官が変わったが,その印象は?
A. 舛添要一新厚労大臣は,非常に論理的に物事を考えられる人だという印象がある.その面では,議論のできる大臣だと考えている.また,官僚が代わるのはしょうがないこと.われわれの姿勢がしっかりしていれば,新しい大臣,新しい事務次官になっても理解してもらえると思う.



(2007.09.03)
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