日本私立歯科大学協会が第1回歯科プレスセミナーを開催

 
 


参加者からは摂食・嚥下に関する質問や,新たな歯学教育にまつわる質問などが多数挙げられ.超高齢社会における歯科医療への関心の高さをうかがわせるセミナーであった.円内左は井出吉信先生(東京歯科大学),右は伊藤公一先生(日本大学歯学部).

社団法人日本私立歯科大学協会(中原 泉会長)は10月1日,東京・千代田区のコンファレンススクエア エムプラスにて,第1回歯科プレスセミナーを開催した.セミナーは多方面の報道関係者が集まる中,歯科の現状を広く国民に知ってもらうため「歯科医学・歯科医療から国民生活を考える」というテーマのもと,井出吉信先生(東京歯科大学副学長)と伊藤公一先生(日本大学歯学部教授)による示唆に富んだ講演が行われた.
 はじめに安井利一副会長・専務理事が協会の設立経緯について以下のように説明した.日本私立歯科大学協会は1976年5月24日に設立され,現在では日本のすべての私立歯科大学・歯学部(15大学17歯学部)が加盟している.わが国の近代歯科医学教育は,明治政府の“歯科は国の富国強兵政策とは直接関連しない”という見解から国立の歯学部が設置されない状況において,歯科医師個人の努力のもと,数校の私立歯科医師養成学校を設立して行われてきた.その後,時代の要請に応えて国の認可を受けながら17校へと拡充,今ではわが国の歯科医師の約75%は私立歯科大学・歯学部出身者である.
 この変遷を鑑み,金子 譲副会長は日本の歯科医学教育を牽引する立場から,最先端の口腔科学研究を紹介するとともに,基礎研究と臨床研究を合わせて臨床応用につなげる分野融合型研究の重要性を訴えた.
 講演で,井出先生は「超高齢社会における歯科医師の役割」と題し,スライドや動画を用いて解剖学の見地から嚥下の仕組みを解説,口腔内の汚れと誤嚥性肺炎の関係をわかりやすく説明した.加えて,今後ますます増え続けていくであろう摂食・嚥下問題に関する相談窓口として歯科医師の存在を挙げ,医療連携はもちろん,確かな知識を持った従事者の育成と新たな歯科医学教育(学生の指導,既卒者および開業医師・開業歯科医師に対する県歯科医師会主催の講習会など)の必要性を繰り返し強調した.
 また,伊藤先生は「歯周病と全身の健康との関係性」と題し,歯周病は歯周病原菌による感染症であり,生活習慣病でもある,という二面性への理解を求めた.2005年の歯科疾患実態調査では,日本の15歳以上の人口(約1億1,000万人)中,歯肉に異常所見のある者は約74%(8,140万人)であるにもかかわらず,歯科受診者数はそのうちの1%台にとどまる(128万人)とされ,報道関係者からは驚きの声も上がった.
 参加したプレス関係者にとっては,超高齢社会における歯科医療の重要性,転換期にある歯科医療や歯科医学教育,さらには健康と生活習慣が深く結び付いた新たな“健康づくり”という概念を実感できた,有意義なセミナーであった.



(2010.10.14)

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