日歯が第161回代議員会を開催

 
 


「歯科医療の重要性に対する認識が広まっており,国民とともに生きがいを支えるための歯科医療について考えてまいりたい」と挨拶する大久保満男会長(円内左).円内右は来賓として挨拶した石井みどり参院議員.民主党からも,大久保潔重参院議員(長崎),水野智彦衆院議員(千葉),川口 浩衆院議員(茨城)の3議員が来賓として挨拶.
日本歯科医師会は3月11・12日の両日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第161回代議員会を開催した.来賓に続き挨拶に立った大久保満男会長は,公益法人制度改革について触れ,福祉共済制度に関して日歯が民間に保険業務を委託していることについて「純粋な民間法人が会員の福祉を支えていることに何の矛盾も存在しない」とし「今後も官と民の公益法人の在り方を分けて考えるとする主張を進めていきたい」と述べた.
 その後,一般会務報告や会計現況報告などがなされ,議案審議が行われた.

議案審議――第2号議案は取り下げ
 議案審議では,13議案が上程されたが,うち第2議案として上程を予定していた「社団法人日本歯科医師会殊遇規則の一部改正について」は,終身会員を規定している定款を改正することなく,会費免除となる資格を「30年以上在籍,70歳以上」から「35年以上在籍,75歳以上」に改正することの承認を求めるものであったが,2月26日の第109回都道府県会長会議で「定款違反の疑いがある」と大阪府歯(岡 邦恭会長)から指摘を受け,臨時理事会で再度検討し,取り下げとなった.大久保会長はこの件について,「執行部は何よりも定款を尊重し規則を遵守すべき立場にあり,上程は妥当ではない」とし,反省の弁を述べた.

 議案審議に続き,各地区代表事前質問と個人事前質問が行われたが,質問の一覧は下記のとおり.
○地区代表事前質問の一覧
北海道・東北地区「定常型社会における真に豊かな歯科口腔医療の姿とは」
関東地区「混合診療・保険外併用療養費制度への日歯の対応について」
九州地区「指導大綱・監査要綱及びそれらに関する行政処分について」
東海・信越地区「診療報酬の算定要件と個別指導について」
東京地区「歯科医師過剰問題解決への挑戦」

○個人事前質問の部門ごとの一覧
歯科医師需給関係……1問,学術・生涯研修・国際渉外関係……2問,情報管理・調査関係……1問,医療管理・税務関係……6問,厚生・会員関係……1問,広報関係……2問,学会関係……1問,中医協・診療報酬関係……2問,医療保険・制度関係……1問,地域保健・産業保健関係……1問,その他……5問

 今回の地区代表事前質問と個人事前質問では,医療管理・税務関係に関して多くの質問が寄せられたが,その中から一部を抜粋して概要を紹介する.
指導大綱・監査要綱及びそれらに関する行政処分について(九州地区代表/田島逸男代議員)
 平成8年4月に改正された指導大綱に基づく指導は行政指導の一環であり,行政手続法では「相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」や「相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない」などとされているにもかかわらず,実態ではそれらを逸脱した表現が盛り込まれ,非常に強制力のあるものと誤解を受けやすい形になっている.また監査は,健康保険法第78条で指導と明確に区分されているにもかかわらず,個別指導から直接監査に移行したりと関係法律や法規と整合性の取れないシステムで取り扱われている状況である.そこで,以下の項目について質問する.
(1)日歯は,情報提供による個別指導以外の高点数による選定システムとなっている指導大綱を,積極的かつ抜本的に見直す考えがあるのか.また,前回代議員会で保険指導の見直しについての要望への対応として平成22年1月14日付けで「指導に関わる要望」を行っているが,進捗状況は?
(2)行政上の事後措置を実施する場合,要綱に記載されている基準はあまりにも抽象的であるうえ,5年間の取消処分は医療機関において再起不能に陥る状況ともなるため,一定のわかりやすい基準を設け,十分な協議を経て決定されるべきと思うが,日歯はその点について検討するつもりは?
(3)医科と歯科の医療機関数の差に比べ,医療機関の取り消しに関して歯科が医科を上回っていることについて日歯の見解は?
渡辺三雄常務理事:(1)一診療所ごとに形態がそれぞれ異なるため,高点数による選定に関しては折衝済みとしている.(2)5年間とされている取消処分期間については2年後,3年後に復帰する制度も含まれている.(3)医科と歯科では置かれている状況が異なるため,比較することは難しい.
堀 憲郎理事:行政手続法の法的な問題について(要旨)
 行政手続法32条において「指導はあくまでも対象者の任意の協力によって成り立つ」とされており,第2項において「結果に従わなかったからといって,対象者が不利益を被らない」といった,指導を受ける側に対する権利の担保がなされている.
 ただ,指導現場においては,根拠法として4つの法律(1:健康保険法,2:国民健康保険法,3:船員保険法,4:高齢者の医療確保に関わる法律)が挙げられており,ここに行政手続法が示されていないのは,行政手続法第1条において「他の法律で定めた場合は別の法律に従う」とされているためである.
 われわれの分野では健康保険法73条「厚生労働大臣の指導を受ける」と「立ち会いを行う」の二点が関係し,指導面で細かな運営が生じるのは,指導大綱と通知レベルで行われていることが原因している.すなわち,法律ではなく通知通達レベルで運用されているのが現実で,“行政手続法という法律の精神に則っているか”という点では,検討し適切な対応をしていく必要がある.
 なお,昭和35年の通知によると,当時は指導の際に実態調査を行っており,その改善が求められていた.これは,「指導のための調査なので,調査結果を基に直ちに監査を行ってはいけない」とする意味合いを持つと同時に,「指導で終わるものは極力指導で終わる,指導を以てなおかつ改善がないものに対しては監査を行う」とするものであり,現在もそれらの通知は生かされているので,そうした観点も含め今後検討したい.

日本歯科衛生士会からの要望に対する日歯の対応について(神奈川県/杉山義祥代議員)
 平成22年1月14日付で日本歯科衛生士会から日歯に対し提出された要望書には,
(1)在宅歯科医療の推進に伴い,歯科衛生士の訪問歯科衛生指導にかかわる診療報酬上の評価を高め,併せて算定要件の緩和
(2)生活習慣病予防対策において,歯周病予防や咀嚼機能の向上を内容とした歯科の保健指導の推進
(3)歯科衛生士の業務の高度化や業務範囲の拡大に伴い,歯科衛生士法第2条における「歯科医師の直接の指導の下に」を「歯科医師の指導の下に」,および「女子」を「者」と改正
以上3点が要点として挙げられているが,これらに対する日歯の考え方と今後の対応は?
中尾 薫常務:(1)算定要件の緩和には至っていない.(2)新たな歯科健診として,喫煙や食生活に関する保健指導を含んだ標準的な成人歯科健診や保健指導マニュアルを提唱している.これらの保健指導については,歯科衛生士が中心となって積極的に実施していただきたいと考えている.
(3)高齢者医療や在宅歯科医療を進める中で,歯科衛生士も他職種との連携が求められており,職業としての社会的評価や医療職としての専門性が問われてくると思う.この点を考慮すると,「直接の指導」がよいのか「指導」のみでよいのか,改正によってどのような問題が生じるのか,また歯科衛生士の業務そのものについても様々な立場の方の意見を基に検討したい.「女子」の文言については,男子の参入が閉ざされているわけではないので,他の医療職の法律と比較し「業務上の体裁を整えたい」という要望と捉えている.

TVメディアによる国民への戦略的啓発PRは本当に不可能なのか(兵庫県/高橋勝之代議員)
(1)日歯によるTVCM実施の検討が行われたと前回の代議員会で述べておられたが,内容,規模,予算について説明をいただきたい.
(2)受診を見合わせている潜在患者に来院していただく施策など,国民に直接的に口腔健康のアピールをし,歯科医療の復権を得るためのPR事業を特化して行うには今しかないと捉えるが,執行部の意向を伺いたい.
古谷田 宏常務:(1)現時点では,放映料3,600万円で30秒CMを日本テレビ「ズームインスーパー」で,4月から通勤・通学者を対象に午前7時台に週1回で3カ月間の放映を予定している.内容は,歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士を紹介し,仕事の意義をアピールしつつ,志願者の増加を図るというもの.なお,2次利用としては,国民向けシンポジウムでの放映や日歯ホームページへの利用を考えている.(2)今後はテレビを積極的に活用していく予定である.

(2010.03.23)

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