全歯懇で“国民の歯科医療をどう守るか”ディスカッション

 


歯科界の現状に対しパネラーからは刺激的な発言もなされ,熱いディスカッションが期待されたが,実際にはやや盛り上がりに欠けるように感じられた.
 11月14日,第56回全国歯科大学同窓・校友会懇話会が福岡県のリーガロイヤルホテル小倉で開催され,シンポジウム「健康管理者としての歯科医師−現行制度の中でどう国民の歯科医療を守るのか」が行われた.
 当番校である九州歯科大学同窓会長・松延彰友先生から「若い先生方が質の高い診療をしようとしても保険制度の壁に阻まれる.このような歯科界のあり方を考え直す機会としたい」と趣旨説明がなされた後,トップバッターの河原英雄先生(大分県開業)は現在の歯科医師国家試験のあり方を「希望を抱く学生の夢を奪う」と批判,また,“噛む”ことが患者のQOL向上に大きく関わることを国民にアピールするため,補綴治療の結果を数値化し“咀嚼能率”として評価することを提言した.
 続いて上野道生先生(福岡県開業)は,増加する高齢者に対応するには医院の総合力を高める必要があり,そのためには優秀な歯科衛生士や歯科技工士を“確かな歯科医療を共に担う専門家”として要するが,「それらの志望者が減少している現状では歯科界に未来はない」と警鐘を鳴らした.
 さらに,開業して5年という若手の立場から中野稔也先生(福岡県開業)は,「必要な処置に対する評価がきわめて少ない」と現在の保険制度に対する疑問を呈し,自費診療に頼らざるを得ない現状を訴えた.
 これまでのパネラーの発言を受け継いだ形で下川公一先生(福岡県開業)は,歯科医療が現在のような混迷状態に陥った原因について,行政,日本歯科医学会,日本歯科医師会が抱える問題点(医療費抑制ありきで患者の視点で考えていない,診療報酬に反映するようなエビデンスのある研究がなされていない,情報開示がなされない環境にある体質,ほか)を厳しく指摘した.
 最後に石井みどり参院議員は,発足当初から補綴処置が導入され発展してきたわが国の医療保険制度について,「技術料を確保する方向に生かすべきであった」「薬価差益を診療報酬の財源にするやり方を認めたことが歯科医療費が低迷している大きな原因」とした.そして,「歯科が拠って立つべきところはあくまで補綴であり,技術料が適切に評価されるよう主張していくべき」と述べた.
 その後,パネラーにより,歯科医師需給問題や民主党の医療政策の方向性などについてディスカッションがなされた.


(2009.11.19)

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