ユニークなアイディアと臨床の架け橋に――日本医用歯科機器学会総会・研究発表大会が開催さる

 


感謝状を受け取る角先生と桃井大会長.
 器材の発達とその利用に依るところの大きい歯科臨床のレベルアップのため,臨床家が幅広い器材の開発に関わる「産学共同」「臨学一体」の発展を目指す「日本医用歯科機器学会」(斎藤 毅会長)の第20回総会・第19回研究発表大会が,去る9月12・13の両日,鶴見大学記念館において開催された(桃井保子大会長).
 恒例であるとともに同学会の真骨頂とも言える“道具大賞”を選出する一般口演では今年も18のユニークなオリジナル機器が発表され,それぞれの機器ごとに活発な意見交換が行われた.金賞に輝いたのは「補綴物研磨時に有効な保持具」(愛歯技工専門学校・田中 誠先生ほか発表)で,その他,各賞の受賞作品は下表のとおり.
 特別講演,シンポジウムでは今大会のメインテーマである「最新の顎口腔診断機器」について,まさに最新の研究を含んだ情報が提示された.角 保徳先生(国立長寿医療センター病院先端医療部口腔機能再建科)による特別講演「光干渉断層画像診断装置(Optical Coherence Tomography)の歯科臨床への応用――歯科用OCT画像診断機器の開発と口腔疾患への応用」では,生体に無害な近赤外光の透過・反射を利用して得られる鮮明な画像の口腔領域での多彩な実用性が紹介されたが,歯科の画像診断に大きな変化をもたらす可能性を秘めた研究は,参加者の誰もが息を飲むほどのインパクトであった.また,シンポジウム“最新の診査機器”(東海林芳郎座長)では「摂食・嚥下のメカニズムを知る」(東京歯科大学・井出吉信先生),「新しいコンセプトによる補綴修復処置への唾液検査の有用性」(大阪歯科大学・田中順子先生),「顎運動の四次元リアルタイム解析と歯科臨床への応用」(鶴見大学・小川 匠先生)の3題の発表をもとにディスカッションが行われた.いずれも,従来の「診査」における術者の判断の個人差を極力抑えることを目的にした提言で,生体のメカニズムに対する正しい知識,診査方法の平均化,情報の数値化・ビジュアル化により診査・診断のレベルアップを図る方策がきわめて臨床的に示され,会場からは共感の声が多く聞かれた.


シンポジウムより.左から井出先生,田中先生,小川先生,右は座長の東海林先生.
 一方,松風社提供のランチョンセミナーではリラックスムードで「『笑顔』をプロデュースする」(鶴見大学・大森かをる先生)と題し,時代にマッチしたホワイトニングの考え方が提案された.『日本歯科評論』5月号でも紹介された歯面コーティング材「ビューティコート」は,“気軽なホワイトニング体験”を提供できる「器材」として,患者のみならず同学会に参加した工夫好きの臨床家にも刺激を与えたに違いない.
 「誰もが同じ水準で診査・診断ができる機器を,誰もが使える環境になり,より良い歯科医療を提供できるようになれば……」,今大会にあたって桃井大会長が掲げたテーマは,そのまま日本医用歯科機器学会の目指すところでもある.今後,より多くの参加者を募り,しのぎを削るような研究発表の継続が期待される.


“道具大賞”の記念撮影より.左から斎藤会長,青柳先生,八重樫先生,西山先生,田中先生,葭田先生,桃井大会長.

道具大賞各賞
(代表発表者と発表演題.敬称略)
金 賞    田中 誠(愛歯技工専門学校)「補綴物研磨時に有効な保持具について」
銀 賞    西山和彦(福島県・あい歯科クリニック)「自由運動咬合器の試作/SAM®をベースに構築した咬合器システム」
銅 賞    葭田秀夫(埼玉県・葭田歯科医院)「高齢者のための頭部背部側方傾斜用パッド」
アイディア賞 八重樫 潤(東京都・銀座US歯科)「非電動回転式歯ブラシの開発および歯垢除去に対する臨床評価」
努力賞    青柳裕仁(神奈川歯科大学 生体材料器械学講座)「下顎印象用トレーのフリーサイズ化への試み」

(2009.9.17)


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