日本歯科インプラント器材協議会がメディアセミナーを開催

 

講演を行う渡邊文彦先生.

 日本歯科インプラント器材協議会(以下,JADIS.黒田和彦会長)は,11月19日,東京・千代田区のストローマン・ジャパン株式会社内セミナールームにおいて,同協議会として初めてのメディアセミナーを開催した.
 オープニングスピーチでは黒田会長が,JADISは発足11年を数え,インプラントやその周辺機器を販売している企業20社で構成されており,市場ではほとんどが直接競合しているライバル企業でありながらも,業界の健全な発展のために協力するという理念のもとに協議会を運営していることを紹介した.
 続いて,今回の演者である日本口腔インプラント学会理事長の渡邊文彦先生(日本歯科大学新潟生命歯学部教授)が「インプラント治療が進むべき方向性を探る〜今さら聞けないインプラントのこと〜」を講演し,インプラントに関わるトラブルの実態を紹介したのち,日本口腔インプラント学会としての対策について以下のように述べた.
 まず,(インプラントの治療技術は当初,歯科医師になってから研修会などで身に付けることが中心だったが)2009年に実施した「口腔インプラント学卒前教育に関するアンケート調査」の結果から,現在ではすべての大学で口腔インプラント学の授業が行われており,同時に将来統一したカリキュラム・ガイドラインが必要であるという回答が96%にのぼったことを示し,学会として「口腔インプラント学は卒後教育から卒前教育へ」という現状に即すために,ガイドラインや基礎実習模型の作成を行っていることを紹介.今後は「口腔インプラント学卒前教育基準」を作成することで,大学による偏りが出ない安定した教育を担保することを目指すとした.
 そして,口腔インプラント専門医育成の取り組みを紹介.口腔インプラント専門医の申請をするためには,研修施設に通算5年以上在籍することやケースプレゼンテーション試験の合格など厳しい条件があることを示した上で,補綴・口腔外科・矯正など包括的な治療ができる人材を育てていることを紹介した.今後は,日本全国に設けられた学会研修施設でのカリキュラムを統一すること,学術研究の推進のために英文誌の発刊やアジア圏を巻き込んだ活動を行っていくことも示した.
 また,患者がインプラント治療を受ける際に歯科医院を選びやすいように,専門医資格の広告表示を可能にすることを目指し,種々の対応を行うとした.さらに,今後とも国民がインプラントについて理解を深められるように講演会などを行うと共に,相談窓口を設け対応を行うこと,また不適切なホームページや広告には学会として毅然とした対応をとっていくとした.
 講演に続いて質疑応答も行われた.「そもそも患者はインプラントの“除去”の必要性を知らないのでは?」という質問に,「患者の年齢により対応は変わってくる」と前置きしながら「治療を行う前に,除去についてしっかり患者に伝えることが重要」と答えた.また「インプラント周囲炎」についても,「炎症を起こしやすい条件や,経過年数などから炎症を起こしやすい時期はわかるため,患者には治療前にしっかり注意を行うことが大切」であるとし,患者との間でインフォームドコンセントを確立することの重要性を強調した.
 今回は第一回メディアセミナーということで一般紙・誌を交え20人ほど参加したが,専門団体によるこのようなセミナーを継続することにより,外部の理解を得られると同時に歯科界内部の浄化が生じることも期待したいものである.

【リンク】
・日本歯科インプラント器材協議会:http://www.j-implant.jp/
(インプラント治療に関するQ&Aなどが掲載されている)
・日本口腔インプラント学会:http://www.shika-implant.org/
(「口腔インプラント治療指針」や「口腔インプラント治療相談窓口」が掲載されている)

(2013.11.26)

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