皆で助け合い,支え合う社会保障は“共助”が基盤(日歯)

 

会見では(写真),国民医療推進協議会の総会において,日医から控除対象外消費税(いわゆる損税)について「課税制度に移行する」旨の意向が示されたことが報告された.日歯は以前より医療の公益性・非営利性という立場から,可能な限り“非課税の存続・還付方式”を求めているが,大久保会長は「最終的な見解を出すまでさまざまな意見調整を交えながら,国民運動として国民皆保険を堅持するだけでなく,よりよいものにするための努力を続けていかなければならない」と述べた.

 日本歯科医師会(大久保満男会長)は10月24日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,消費税の引き上げと次期診療報酬改定について触れ,「増税分を社会保障に補填すると使い道が明確化されているのだから,新たな医療提供体制の整備や医療・介護保険の充実など,目に見える形で社会に示さなければ国民は増税に納得できない」と改めて述べた.しかし,現在の厳しい財政状況下では,すでに開催されているさまざまな委員会等でも「プラス改定はあり得ない」との発言も聞かれ,経済格差が健康格差につながりかねない非常に難しい局面を迎えている.景気回復や経済発展も当然重要であると前置きしたうえで,TPP含め「ビジネスがやりやすくなるという論理だけで世界が回っていくのは問題」と語る大久保会長は,「社会保障は“共助”が基盤であり,“皆で支え合う”という精神がなくなった社会は文字どおり競争社会と化し,やがて秩序が崩壊してしまう」と,経済のみを優先する国家戦略・政策に強い懸念を示した.他に紹介された主な内容は以下のとおり.

国民医療を守るための国民運動
 医療団体を中心に構成される「国民医療推進協議会」は,10月23日に第9回の総会を開き,来る12月6日に「国民医療を守るための国民運動」の総決起大会を開催することを決定した.同運動の目的は以下の3点である.
1)経済だけを優先する国家戦略特区等における医療への過度な規制緩和により,国民が所得によって受けられる医療に格差が生じないよう,
 ①公的な医療給付範囲を将来にわたり維持すること
 ②混合診療を全面解禁しないこと
 ③営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させないこと
 の3つの条件が守られた国民皆保険の恒久的堅持を,国民とともに政府へ訴えていく.
2)地域医療の担い手である医療機関の多くを経営破綻へと導く,医療に関する消費税問題の抜本的解決を,国民とともに政府へ求めていく.
3)国民に必要かつ充分な医療を提供することは医療機関の責務であり,そのために必要な医療財源の確保を,国民とともに政府へ求めていく.

第11回フォーラム(8020推進財団)報告
 10月19日に開催された同フォーラムについて,山科副理事長が報告した.平成23年度歯科疾患実態調査における“38.3%”という8020達成率には評価を示しつつも,さらなる達成率向上のためには「“口腔保健の向上”というスローガンを掲げる啓発活動のみでは難しい」とし,昨今特に増加している高齢者のう蝕予防に対するリスクアプローチの必要性を述べた.今後とも健康長寿社会の実現に向けて,「医療と保健のベストミックス」の確立を目指していく.

世界会議2015の開催
 2015年3月13〜15日,東京国際フォーラムにおいて,高齢社会における歯科医療・歯科保健の在り方を考える「世界会議」が開催される.FDIでの大久保会長の講演中にも告知されたこの会議には,同じ悩みを抱える歯科医師を世界各国から招聘し,世界的に急増している高齢者の健康を守るための歯科医療政策について議論していく.世界に先駆けて超高齢社会における歯科医療に取り組んできた,わが国のリーダーシップが期待される.

(2013.11.06)

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