第11回フォーラム8020が有意義に開催

 

フォーラム開催に先立ち,挨拶を行う山科 透副理事長(円内).フォーラムの様子.会場はほぼ満席で,参加者は各講演に熱心に耳を傾けていた.


シンポジウムの様子.各演者それぞれの講演を通して明確になった問題点や,対応策について質問し合っていた.さまざまな分野で活躍する演者らの生討論は,参加者にとって大きな刺激となったであろう.

 公益財団法人8020推進財団は10月19日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館にて「第11回フォーラム8020」を開催した.講演はう蝕予防・歯周病予防・歯科口腔保健法と都道府県条例の3つに分かれ,それぞれの項目で2講演ずつ行われた.
 まず,う蝕予防について,神原正樹先生(大歯大教授)の「カリエスフリー,むし歯0(ゼロ)社会について」では,世代や地域の間で生じているう蝕の格差の現状についてデータを提示し,なぜこのような格差が生じたのかを原因追究し対策を練るとした.また,ACFFの“Cavity-Free”と“Caries-Free”の違いに注目し,今後は“Cavity-Free”についても見解を広げていく必要もあると語った.
 小林清吾先生(日大教授)の「フッ化物によるう蝕予防――水道水フロリデーションと健康社会――」では,フロリデーションの理念や効果,アメリカほか諸外国での例を参考に,その効果・応用性を解説した.日本ではまだ実用化されておらず,行政・国民の意見を反映させつつ,実用化を目指したいと語った.
 次に,歯周病予防の演目では,花田信弘先生(鶴見大教授)が,「健康長寿社会を実現するための定期歯科検診と歯周病予防,特にだ液検査について」を発表した.歯周病は出血を伴うが,唾液中の唾液ヘモグロビン量を測定し,口腔内で出血がないか検査を行うことは有用である.肉眼では見分けられない出血を測定することもできるため,早期に治療を始め,悪化するのを防ぐことにつながる.
 また「歯周病予防のための検査」では,吉江弘正先生(新潟大教授)が,「唾液・ポケット内の歯周病原細菌検査」と「病原細菌に対する血清抗体価検査」について解説した.この2つの検査を行うことで,歯周病の進行を予知できる.歯周病半減のために本検査を広く普及させ,保険診療の導入を可能にするためにも,さらなる研究が期待される.
 最後に,歯科口腔保健法と都道府県条例の項目では「歯科口腔保健の推進に関する法律について」を小椋正之氏(厚労省歯科口腔保健推進室室長)が,「県条例に対する具体的取り組みをどう考えるか」を三木昭代先生(埼玉県歯科医師会理事)が,それぞれ講演を行った.平成25年度予算において,都道府県・保健所設置市および特別区を補助対象とした「口腔保健推進事業」が新設され,地域における歯科口腔保健がより推進されることが期待される.こうした動きを踏まえ,三木先生は各都道府県で具体的にどのような活動を行っていくべきか,埼玉県の条例に沿った活動から具体例を示した.埼玉県では,上記の予算確立以前から歯科保健推進委員会を設置し,協議を行ってきた.乳幼児や小児,高齢者だけではなく,青年期や成人期でのう蝕予防や健全な口腔状態の維持を目標に,各ライフステージに沿った支援活動を行い,全世代での健全な口腔を目指している.「各都道府県で活動するには,法律と県条例の釣り合い,活動内容や方法が地域に適していなければならない.地域に根差した活動のために,より一層慎重に進めていくべきだ」とまとめた.
 講演後には,佐藤 徹8020推進財団常務理事と山科 透同財団副理事長も加わり,演者一同によるシンポジウムが行われた.それぞれの講演を踏まえ,まとめや意見交換,質疑応答とともに,聴講者も交えた活発な議論が交わされた.

(2013.10.31)

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