第2回Anti-Aging Food Showが盛況裏に開催
フードショー開催に先立って,挨拶を行う松尾 通会長(円内).今年で2回目を迎える講演の様子.ほぼ満席で,大盛況の内に幕を閉じた.
会場には,企業展示も設置されていた.アンチエイジングを臨床に活かそうと,参加者らは積極的に見学していた.
栄養バランス・彩り・消化・咀嚼に加え,抗酸化・抗糖化も考慮された,特製アンチエイジング弁当(日本アンチエイジング歯科学会・坂本紗有見先生監修:上).“噛む”動作を自然と行いながら,味も見た目も楽しめる一品となっている.福田氏考案の「アンチエイジングティー・常若茶」(下).昆布・ひじき・しいたけ・クコの実にほうじ茶を注いだもの.昆布などは食べられるため,軽食にもなる.“お茶”というよりも風味豊かな“出し汁”に近い.
日本アンチエイジング歯科学会(松尾 通会長)は10月20日,東京・品川区のアートヴィレッジ大崎セントラルタワーにて,「Anti-Aging Food Show」を開催した.昨年大好評を博した同講演会がさらなる発展を遂げ,あいにくの天気にもかかわらず,本年度も満席となった.
本講演会は「食と歯科」の関わり方を,咬合・咀嚼・食育・栄養・栄養補助食品・調理・生活習慣・健康を柱に,各分野の専門家を招き,広い視野で考えていくことを目的としている.
まず,梅田悦生先生(赤坂山王クリニック院長)が「ワインと健康」の講演を行った.フランスでは他の欧米諸国に引けを取らない高カロリー・高脂質の食事をしているにもかかわらず,虚血性疾患(心筋梗塞,狭心症,脳卒中)が少ない.そこでワインに含まれるポリフェノールの効能に注目した.ポリフェノールはアントシアニン,イソフラボン,カテキンなどの総称で,抗酸化作用や抗血栓凝集抑制作用,LDL酸化抑制作用,テロメアの保護作用などの効用がある.しかし,逆にフランスでは,アルコール中毒で死亡する件数が多いという.梅田先生は,適切な量のワインを嗜むことが,ワインを楽しむことだと結んだ.
次にリトランテ・シルベラードのグランドシェフである中原弘光氏が,料理人の視点から,アンチエイジングに適した食材や,調理法について熱く語った.オリーブオイルやバルサミコ酢など,日本食ではあまり馴染みのない調味料を使う調理法に,女性参加者からは驚きの声が上がっていた.また,参加者の親睦を深めるために前日開催された“前夜祭”での,歯ごたえや彩りを損なわず“抗酸化・抗糖化”を考慮したアンチエイジング・イタリアンメニューも,参加者には好評だった.
久保 明先生(東海大教授)による「食と安全なサプリメントからのアンチエイジング」では,サプリメントの“効果”の光と影について解説が行われた.若い女性から高齢者まで,幅広い世代が手軽に摂取できるサプリメントは,その効果や安全性に関するさまざまな問題が起きている.それぞれのサプリメントの“効果”を正しく理解しなければ,副作用をきたす恐れがある.しかし,サプリメントの使用は患者の治療意識向上や,健康志向の表れでもあるので,むやみにやめさせるべきではない.久保先生は,来院した患者がサプリメントを服用している場合,その種類や飲む頻度,組み合わせなどをよく聞いて治療を行うよう,警鐘を鳴らした.
「歯科医療における食のパラダイムシフト」では,武内博朗先生(鶴見大臨床教授)が,義歯装着後や補綴後の食事指導における注意点を述べた.義歯装着や補綴を行うことで,患者の咀嚼力は格段に上がるが,つい食べ過ぎてしまったり,よく噛まずに飲み込んだりと,食事状況が変化してしまう.そのため,食事の量は変えないままカロリーを減らしたり,食事の栄養バランスを考慮するよう指導を行う必要がある.歯科医師として,治療後の患者の健康を考えながら,自分で噛んで食べる喜びをいつまでも患者に味わって欲しい,と締めた.
続いて,福田典子氏(ドルチェ・ヴィータ株式会社代表取締役)が「アンチエイジングティーと和漢方食材」の講演を行った.日本人に身近な“お茶”を用いて心も体も癒し,豊富な栄養素を簡単に摂取することのできる「アンチエイジングティー」は誰でも気軽に楽しめる.アミノ酸は60℃を超えると溶け出すなど,お茶を淹れる際の注意点に,参加者たちは熱心に耳を傾けていた.会場では,福田氏考案のアンチエイジングティーが配られ,実際に飲むことで参加者たちはその効果を実感していた.
他にも山内眞理歯科衛生士による「食とマナー」,志田佐和子歯科衛生士の「見つめ直そう! 日本の食」,横井節子歯科衛生士の「サプリメントアドバイザーとしての食の提案」など,さまざまな視点から“食と歯科”の関わり方を提言した.ファストフードや冷凍食品,清涼飲料水など,子どもの頃から柔らかく,歯ごたえのない糖質が多いものを食べて育つようでは,サプリメントでいくら栄養を補っても,将来的に,歯も体も悪い影響を受けると危惧した.季節の食材を活かした歯ごたえのある食事を,マナー良く食べる指導を歯科医師が行えば,結果的に全身疾患だけではなく,歯科疾患の予防にも繋がるとした.
最後に,菊谷 武先生(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)による,「食とコミュニケーション」の講演が行われた.菊谷先生は,高齢者に対する食支援は多いが,障害を持つ子どもたちに対する食支援が足りないと訴えた.高齢者にも子どもたちにも,自分の口でしっかりと噛んで食べさせたいと考え,本人や家族が望むのなら,わずかな期間でも自分の口から“食べる”ことができるように工夫をこらして対応した症例を紹介した.また,進行性の疾患を,“どうせ悪くなるのだから”と諦めず,“今この瞬間が一番状態が良い時だ”と考え,治療を行うことが大切だと述べた.
講演会のまとめとして,青木 晃先生(順天堂大准教授)が,「生活に密着したAnti-Aging Foodを広めるために――SNSを使った新しいアンチエイジングの実践法とは――」を述べた.「食事療法」や「運動療法」などで,長年の生活習慣を変えることは容易ではない.達成するには自分の意志だけではなく,周りの協力が必要不可欠である.そこでSNSを有効活用する方法を提示した.SNSでの「日記」「つぶやき」は遠く離れた親や友人,仕事仲間など多くの人の目にとまる.食事の写真や運動の記録など,自身の結果が目に見えてわかるようになれば,自己反省や周りの評価が明確になる.また,そのSNSを参考に,別の誰かが「食事療法」や「運動療法」を行えば,さらに別の誰かに広がり,自ら健康に気を使う輪が広がっていくという.青木先生自身も毎日1万歩ウォーキングを5年以上も続けており,その成果をSNSを通して発信することで,見た人々の間にウォーキングが広まっている,と語った.
講演の様子.梅田悦生先生(左上),菊谷 武先生(右上),中原弘光氏(左下),久保 明先生(右下).限られた時間の中,どの講演も中身が濃く,かつ明日からの臨床にすぐに反映できるものばかりであり,参加者は充実した1日を過ごした.
各講演の演者ら.上段左から武内博朗先生,青木 晃先生,福田典子氏.下段左から山内眞理歯科衛生士,志田佐和子歯科衛生士,横井節子歯科衛生士.
(2013.10.31)
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