日歯が第173回定時代議員会を開催,新執行部がスタート

 

実際に代議員によって行われた投票の様子.公益法人制度改革にあたっては法律で定められた理事・監事の選出方法など,日歯の組織性格にはそぐわないものも多く,事前質問でも代議員より不合理の是正や法改正を求める声が多く上がった.村上恵一専務理事は,内閣府の移行認定がひとまず落ち着いてから,頃合いを見て改めて各方面への働きかけを検討したい,としている.


第173回定時代議員会終了後,第1回の理事会が開催され,新役員が決定するとともに第5次大久保執行部がスタートした.

 日本歯科医師会は6月20・21日の両日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において,公益社団法人移行後初めてとなる第173回定時代議員会を開催した.大久保満男会長や,今夏に参院選を控えた石井みどり参議院議員ら各来賓による挨拶に続き,会長予備選挙報告,一般会務報告,社会保険関係報告,地域保健関係報告,会計現況報告などの各種報告がなされた後,事業報告と議案審議に入った.議案はすべて執行部提案どおり可決・確定されたが,そのうち第3号議案(理事選任)と第4号議案(監事選任)では,初の試みということもあり実際に代議員による投票が行われ,理事24名,監事3名の選出となった.また,議案審議に引き続き,各地区代表事前質問と個人事前質問に対する質疑応答が行われた.質問の一覧は下記のとおり.

○地区代表事前質問の一覧
中国・四国地区「医療費の負担割合について」
東京地区「保険診療への消費税「ゼロ税率」について」
北海道・東北地区「東日本大震災を前例としての今後の大規模災害への取組みについて」
東海・信越地区「集団的個別指導の選択基準について」
九州地区「「個別指導,共同指導等に関する要望書」について」
近北地区「HIVなどの感染症と診療所の受入体制」
関東地区「がん患者の口腔ケア医科歯科連携事業における諸問題への対応について」

○個人事前質問の部門ごとの一覧
中医協・診療報酬関係……6問,地域保健・産業保健関係……3問,歯科医師需給関係……1問,学術・生涯研修・国際渉外関係……1問,医療情報・IT・調査関係……2問,医療管理・税務関係……3問,厚生・会員関係……1問,広報関係……2問,学会関係……1問,災害時対策・警察歯科関係……1問,日本歯科総合研究機構関係……1問,その他……3問
 今回の地区代表事前質問と個人事前質問では,中医協・診療報酬,地域保健・産業保健,医療管理・税務関係などに関して多くの質問が寄せられたが,その中から一部を抜粋し,以下に概要を紹介する.

医療費の負担割合について(中国・四国地区代表/樋口壽一郎議員)
 産業競争力会議において,民間議員から原則3割の自己負担割合に対し,疾病の種類に応じて差をつける仕組みの導入や高齢者への負担増を求める提案がなされている.これはTPP交渉等の展開如何にかかわらず国民皆保険制度の根幹を揺るがし,とりわけ歯科においては受診抑制への引き金ともなりかねない.また,歯科医療は健康寿命の延伸に大きな役割を果たしていると自負し,認知されてきた立場からも,到底看過できないものである.今後,診療報酬の次期改定に向けて“軽費医療”という概念が歯科に対してどのように関わるのか,執行部の対応を伺いたい.
大久保満男会長:この頃はTPPや消費税ほかあらゆる問題が持ち上がり,日医も日歯もある意味受け身で対応せざるをえない状況が続いたが,自ら積極的に働きかける姿勢を忘れるべきではない.かつて小泉政権下の医療費抑制政策で医療崩壊を招いた事実をわかっていながら,同じ主張が繰り返されることには憤りすら覚える.経済成長議論の中ではとりわけ産業ばかりが大きく取り上げられるが,医療の中身,特に国民皆保険制度をより充実させて国民の健康を守ること,そのためには市場に任せず国がきちんと負担をすること,それこそが国家の活力を高め,ひいては経済成長に寄与するのである.そのことをしっかり念頭に置き,政府との交渉をはじめ今後も頑張って参りたい.

東日本大震災を前例としての今後の大規模災害への取組みについて(北海道・東北地区代表/石黒慶一議員)
 東日本大震災から2年が経過した.さらに引き続き全国的な支援と連携が必要であると思われるが,今後,新執行部として以下の3点,①被災地域における歯科医療機関(診療所や技工所ほか)のインフラ整備の現状,②「被災者健康支援連絡協議会」とはどのような組織であるのか・協議会内で議論されている内容,③日歯主導のもと全都道府県歯間で協定を結ぶなど連携に関する具体的な取り組み,についてどのように考えているのか伺いたい.
柳川忠廣常務理事:深刻な被災となった255名のうち,元の場所・同県内での復旧が約70%,仮設診療所が約6%,県の内外で勤務医が約7%,診療を辞めた会員が約7%となっている.技工所についても要望を受け支援の必要性を指摘しているが,医療機関とは異なる扱いのため助成や補助が遅れていると聞く.引き続き,内部的な措置と併せて国の支援から歯科医療機関が決して漏れることのないよう対応して参りたい.被災者健康支援連絡協議会では,被災3県をテレビ会議でつないでどの地区に何が足りないのか,より具体的な議論をしている.また,出動に関する議論も行われており,日歯としてはJMATに病院歯科・口腔外科の歯科医師を対応させてほしいと要望している.協定の必要性は日歯も認知しているが,全国間で結ぶ場合の有効性等を吟味し,災害コーディネーター研修などでも共通テーマとして協議したい.行政の協定に準じるもののほうが実効性が高いので,そのように検討して参りたい.

「個別指導,共同指導等に関する要望書」について(九州地区代表/伊地知博史議員)
 かねてより日歯,とりわけ堀常務のご努力には改めて感謝の意を表するが,標記の要望書について以下の3点を伺うとともに要望する.①技官の質と臨床経験の問題について示された対策はあるか.②個別指導,共同指導等に関する各論的事項(早期是正を求めるもの)について検討されている様子はあるか.③この要望書は地区歯科医師会からの要望等をもとにそれぞれの問題点を集約して作成されたと理解しているが,今後ともぜひ継続していただきたい.
堀 憲郎常務理事:まず,要望書は4月25日に提出したばかりであるので,これを踏まえた大きな変化はまだないということをご理解いただきたい.技官の質や臨床経験の問題についても今のところ変化はないが,技官によっては現場で立ち会っていてもまったく噛み合わない指摘をする場合も多く,その問題意識を監査室と共有できるよう要望を続けていくことの必要性を感じている.集団的個別指導等に関しては,都道府県歯と行政との話し合いなど各地区の事情によって対応していただく形で結構である.都道府県における個別指導については,基本的には都道府県歯と地方厚生局等との間で運営されるものであるから,何か問題が生じたらまず当事者として都道府県歯にしっかり伝えていただき,申し入れをしても改善が見られないような場合には具体的な事例を添えて,ぜひ日歯までお知らせいただきたい.

「雇用の質の向上」に関する日本歯科医師会の取り組みについて(北海道/川野正嗣議員)
厚労省は平成25年2月,医療分野の「雇用の質」向上プロジェクトチーム報告を受け,同年度後半からモデル事業の実施や全国展開に向けた検討を計画している.わが国では少子高齢化に伴い新卒就業者が減少する一方で,医療ニーズの多様化が生じ,将来的に医療スタッフの確保が困難になることが予想される.医科ではすでに都道府県に予算を付けて具体的な支援策を考えているようだが,この医療分野の「雇用の質」の向上計画の中には歯科はまったく入っていない.国の支援策に置き去りにされないよう早急な検討と対策が必要と考えるが,日歯の見解は如何か.
溝渕健一常務理事:同プロジェクトチームの報告書を読むと,「看護師等の雇用の質の向上」とあり,すでに職種が限定されている印象である.看護師の当直など労働環境を緩和するほか,供給体制改善には今年度227億円の予算が付き,各都道府県のナースセンターとハローワークの相談者とのマッチングを行うモデル事業をはじめ3つの事業が予定されているが,ここに歯科が入り込む余地はない.歯科衛生士については,2年制から3年制への移行とも相まりしばらく需給関係が落ち込んでいたが,平成25年は6,000名,27年は大体7,400名にまで卒業者数が回復する見込みである.5年先まではなんとかなりそうではあるが,10年先となると予想がつかないのが正直なところである.
川野正嗣代議員(要望):3年制への移行で歯科衛生士の卒業率は増えていると聞くが,就業率や歯科医院への充足率はさほど上がっていないので,将来的に雇用関係が悪化する可能性は非常に高い.また,この議論の中には当初は歯科を含めて“医療関係すべて”が含まれていたように記憶している.いつの間にか歯科が外れてしまった経緯があるので,今後はぜひ,厚労省や歯科関連の議員の方々にも働きかけをお願いしたい.


(2013.07.04)

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