総合的な視点をもって消費税問題への対応を(日歯)

 

公益社団法人移行後,初の代議員会が6月20日・21日の日程で開催され,次期執行部の顔ぶれがそこで正式に決定する.上程議案としてはすでに5月8日に確定しているとのことだが,代議員会ではそれぞれが一人ひとり理事として立候補し,会員の意を諮ることになる.

 日本歯科医師会(大久保満男会長)は5月30日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,平成26年度から引き上げが予定されている消費税問題について,先般与党PTより受けたヒアリングについて報告した.会長は歯科界の大きな関心事である診療報酬等の議論についても「当然大切」と前置きしながら,公的な医療保険(国民皆保険)制度と地域保健活動との連携や,超高齢社会におけるQOL,健康寿命の延伸,看取りの医療に歯科がどう関わるか等,基本を押さえることの重要性を述べている.そして「今後増税が免れないとするならば,その分,新しい医療の提供体制を整備するなど国民に納得いただけるような道筋を示し,総合的な視点をもって進めていかなければならない」と,従来どおり“国民の健康と生活を守る”日歯の基本方針を改めて示した.他に紹介された主な内容は以下のとおり.

医療に係わる消費税問題
 二段階で予定されている増税のうち,まず8%時には医療は非課税扱い,控除対象外消費税も診療報酬で補填されるという現状と同様の対応が予想されるが,現行の方式にはこれまで日歯が繰り返し指摘をしてきたようにさまざまな問題(補填漏れ,煩雑な計算式,医療経済実態調査の設計不備,高額投資や仕入れ等の問題,財源の貼り付け先,歯科診療所の特殊性による事務的負担増など)が散見される.また,10%時には課税か非課税か,医療の扱いそのものに対しての議論がなされているが,日歯としては控除対象外消費税問題の解決が焦点という考えである.さらには今後,医療への課税が決定すればその非営利性・公共性・公益性が否定されかねないという危機感もあり,日歯を含めた診療側は,第一に現行の方式を是正したうえで柔軟な活用を望んでいる.そのほか,事業税非課税措置や四段階特措法の存続,医療機器特別償却制度の活用など,常の税制要望についても引き続き理解と一層の対応を求めた.

死因究明等推進計画検討会議
 日歯は同会議の検討課題について,「人材の育成」と「施設等の整備」を掲げた.前者については,①地域の歯科医師会と所轄の警察との現場の作業手順に則った合同研修会,②警察歯科分野に特化した災害歯科コーディネーターの養成,③法歯学教育体制の整備,後者については,④資機材のパッケージや照合解析ソフトの活用,⑤歯科情報の標準化,⑥データベース構築,が挙げられる.すでに⑤については政府予算が割り当てられ実証実験も予定されているが,③については全29歯学部・歯科大学のうち法歯学講座が7つ,常勤歯科医師は20数名のみである.また,⑥についてはかかりつけ歯科医院におけるデータ整備はもちろん,警察で扱う身元不明のご遺体(年間1,000〜1,200体程度)の歯科所見を先に採取すべきだという意見も聞かれ,各方面と密に連携を取りながら進めていく.

特定機能病院の認定要件にまつわる改正案
 特定機能病院が標榜する診療科について,現状では16診療科中10以上の標榜で要件に適うが,改正案では「16診療科すべての標榜を必須」としている.これはより質の高い,高度な医療を提供する同病院の趣旨に即した好ましい流れであるが,歯科については「ただし歯科については標榜していない場合や,病院と同一系列の歯科病院と連携して対応している場合があるが,どのように取り扱うべきか」とされ,日歯は強い懸念を示している.検討会では委員から現状で歯科が標榜されていない病院の改正後の扱いについて懸念も上がったとされるが,日歯としては,改正案では「すべて標榜」としているのだから,そこで歯科が除外されてしまうのはいかがなものか,医科歯科連携が推進されている現状にもそぐわない,と歯科に関する但し書きは不要であるとの意を毅然と示した.


(2013.06.11)

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