保険外併用療養の拡大,公的保険の縮小を懸念(日歯)

 

2月8日に投票締切・即日開票された日本歯科医師会会長予備選挙では,現会長が4期目の当選を果たした.この結果を受けて大久保会長は「初心に返って2年間の会務を執行して参りたい」と抱負を述べたうえで,「今後の政局や超高齢社会の深刻な進行など課題はあるが,当面,まずは次期診療報酬改定に向けて取り組んでいく」と,4月に公益法人社団へ移行する“新たな”日歯の会長として歯科界のさらなる発展に尽力していく姿勢を示した.

 日本歯科医師会(大久保満男会長)は2月21日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,規制改革会議等で議論されている保険外併用療養の拡大について触れ,民間企業や市場経済にある程度任せようとする規制緩和の動きがあちこちで加速している現状に懸念を表明し,医師会とともに終始一貫して反対し続けていく意向を改めて示した.金融審議会においても,民間医療保険における現物給付型の新しい商品を求める声が上がっているが,「国民皆保険制度の在り方を崩しかねない」と危機感を露わに,「わが国の社会保障,特に医療が何処へ向かうのかきわめて注意深く観察し,日歯としてもしっかりと意見を出していかなければならない」と述べた.また,村上恵一専務理事から,同日内閣府より公益法人移行認定申請に関する答申書が決定した旨の連絡を受けたとの報告がなされた.認定証は4月1日の移行に併せて3月21日に交付される.他に紹介された内容は以下のとおり.

身元確認のための歯科情報照合ソフトウェア
 東北大の青木孝文副学長(大学院情報科学研究科教授)が中心となって開発し,すでに宮城県警で採用され実際に活用されている身元確認のための歯科情報照合ソフトウェア「Dental Finder」が,このたび日歯へ無償提供された.本ソフトは死後記録(口腔内所見,エックス線写真)と生前所見とを照合するシステムであり,東日本大震災における実績(歯科所見採取のご遺体8,750体のうち宮城県では57%の約5,000体を照合)がある.また,大きな特徴として実際のデータを元に改変した訓練用の歯科情報(生前データ1,000件,死後データ1,000件)を搭載し,有事に限らず実際の災害・事故・事件を想定した訓練にも使用することができる.今後,歯科情報のデータ様式の統一など課題はあるものの,日歯での活用はもちろん,都道府県歯科医師会や警察歯科医会とのさらなる連携が期待される.

死因究明制度に関するパブリックコメント
 日歯は2月16日に,死体取扱規則に関する2件のコメントを提出した.1件目は「取扱死体の死因を明らかにするため医師に行わせる検査」を「医師および歯科医師に行わせる検査」に,2件目は第六条2項の「死体の見分を行うに当つて必要があるときは,医師の立会を求めなければならない」を「医師又は歯科医師の立会を求めなければならない」に改めるよう要望したコメントである.特に後者は国家公安委員会規則であり,この数十年来改訂は非常に困難であったようだが,日歯は近年制定された身元確認に関する法律等の中でも「歯科医師」の明記がある程度なされてきた現状を踏まえ,整合性をとるためにも「医師・歯科医師」の併記を求めていく,とした.

BS朝日 「生きる」の入り口〜口腔ケアは,生活の中へ〜
 昨年4月の役員合宿勉強会以来,国民に向けた多角的な広報活動の一環としてテレビ番組の製作が企画されていたが,日歯はこのたび複数の広告代理店から募ったコンペを経て,BS朝日(BS5ch)にて3月2日(土)より毎週午前11時半から30分間,5週連続で全国放送を開始することを発表した.なお週刊文春・週刊新潮においても,大久保会長と著名人との対談記事が6週連続で掲載されるとのことである.


(2013.03.05)

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