口腔がん患者および家族に質の高い終末期医療を(日歯)

 

会見の最後には,“テレビ番組による日歯の広報活動”を今後事業として展開していく旨が発表された.これは今年4月に実施された役員勉強会以来,“国民にアピールするための広報活動”についての話し合いが重ねられてきた経緯を踏まえたもので,倉治ななえ常務理事(広報担当)によると,日歯は,限られた予算のなかでどのような番組内容で訴求できるのか,複数の広告代理店から応募を募って後日コンペを開催するとの予定である.

 日本歯科医師会(大久保満男会長)は10月18日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.紹介された内容は以下のとおり.

平成24年度版『食育白書』
 このたび内閣府より平成24年度版『食育白書』が公表され,歯科に関する記載も散見された.なかでも「健康日本21」最終評価目標達成状況において,8020運動の達成者数など,歯科はほとんどの目標においてA(目標値に達した)もしくはB(目標値に達していないが改善傾向にある)の区分に該当していた.

「心のケアプロジェクト」最終報告書
 東日本大震災において日歯から被災地へ派遣された歯科医師,歯科衛生士を対象に行われた「心のケア相談」・「アンケート調査」の最終報告書が,同月1日付で国際医療福祉大学のプロジェクトチームより提出された.臨床心理士らによる分析を経た報告書には,PTSD症状の発現傾向や,派遣前・中・後それぞれにおける対策など,詳細な内容が記載されている.11月からは災害コーディネーターの研修事業が始まることもあり,日歯は今後の派遣等に向けてこの結果を行動計画に反映させていきたい,と体制拡充へ積極的に取り組んでいく姿勢を示した.

尊厳死法制化を考える議員連盟への要請書
 日歯(大久保会長),日歯連盟(髙木会長),日本歯科医学会(江藤会長)の3団体は同日,標記の議員連盟に対して要請書を提出した.現在同議員連盟で審議されている「尊厳死法案」では,適切な医療を受けても回復の見込みがなく,死期が間近と判断される状態を「終末期」と定義し,その「判定は,2人以上の医師による」と記されている.しかし特に口腔がんの末期患者など,歯科口腔領域においても終末期医療は行われており,仮にこのまま条文が定められると同分野における“歯科医師”の関わりが失われてしまう.そこで,立法化にあたっては「終末期の判定は,2人以上の医師による(歯科口腔領域の疾患の場合,1人は担当医である歯科医師とする)」と,条文に歯科医師の参画も加味したうえで,より質の高い終末期医療が提供されるよう求めていく.また大久保会長は,このたびの要請はこのような口腔外科医らによる直接的な関わりだけではなく,最期まで口から「どう食べさせるか」という,施設等における歯科医師の“食”を通した全般的なアプローチの可能性も示すものである,と補足した.

第22回日本歯科医学会総会
 11月9日〜11日の3日間にわたって開催される同学会総会への事前参加登録者数は,当初の目標を超える21,011名となり,盛会な開催が期待される.また,開会講演には2012年ノーベル医学生理学賞受賞者である山中伸弥教授(京都大学)を招く予定であったが,受賞に伴う日程調整のため,急遽,同じ京都大学iPS細胞研究所に所属し,iPS細胞発見時の実験を担当した共同研究者でもある高橋和利講師へと演者が変更される運びとなった.講演の内容・時間はともに変わらず,「iPS細胞研究の進展」の演題で,11月9日16時から大阪国際会議場メインホールにて行われる.

(2012.10.30)

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