日歯が第171回代議員会を開催

 
 

第1日目に,箱崎守男代議員(岩手県)からの質問を受けて,執行部提案としては上程されていなかった「日本歯科医師会の職員人件費のあり方に関する特別委員会の設置」が急遽開いた緊急理事会の後に第9号議案として提案され,他の議案同様「挙手多数」で可決された(円内は挨拶を述べる大久保満男会長).

日本歯科医師会は9月13・14日の両日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第171回代議員会を開催した.大久保満男会長は冒頭の挨拶で,日本歯科医師会が高齢化の波にどう対応しようとしているのか,各国の歯科医師会が注目している現状をふまえ,「海外から高く評価されている国民皆保険制度は昨年で創設50年を迎えたが,日歯としても国民皆保険制度をどう守るか,考えを打ち出したい」と抱負を述べた.
 来賓には,石井みどり参院議員(自民党),大久保潔重参院議員(民主党),川口 浩衆院議員(民主党),水野智彦衆院議員(民主党),西村まさみ参院議員(民主党),髙木幹正日歯連盟会長らが出席し,それぞれ挨拶を述べた.
 続いて,一般会務,社会保険関係,会計現況の各種報告が行われ,議案審議に入り,平成23年度の会計歳入歳出決算など9つの議案は執行部提案どおり可決された.
 その後,各地区代表事前質問と個人事前質問に対する質疑応答が行われたが,質問の一覧は下記のとおり.

○地区代表事前質問の一覧
東海・信越地区「乳幼児への平等な子育て支援,特に口腔機能の発達支援の確立について」
中国・四国地区「被保険者負担割合の軽減について」
近北地区「社会保障制度改革推進法案について」
九州地区「社会保険診療報酬の控除対象外消費税について」
関東地区「『医療基本法』について」
東京地区「『大規模災害時の行動計画』の見直しについて」
北海道・東北地区「在宅歯科診療における日本歯科医師会の役割について」

○個人事前質問の部門ごとの一覧
中医協・診療報酬関係……5問,医療保険・制度関係……3問,地域保健・産業保健関係……11問,学術・生涯研修・国際渉外関係……3問,情報管理・調査関係……1問,厚生・会員関係……4問,広報関係……2問,学会関係……1問,その他……6問

 今回の地区代表事前質問と個人事前質問では,地域保健・産業保健関係などに関して多くの質問が寄せられたが,その中から一部を抜粋し概要を紹介する.

「社会保障制度改革推進法案について」(近北地区代表/川野敏樹代議員)
 この法案が公的医療保険の守備範囲の縮小や医療格差につながるのではないか,と危機感を強めている.今後,社会保障の抑制にどのように対峙していくのか教えていただきたい.
大久保満男会長:同様に危機意識を持っている.国民から税を徴収し,再分配することが政府の最大の課題だが,社会保障制度改革は「自助・共助・公助の最適バランスに留意し……」と,公助が一番後に位置付けされてしまっている.これは順序が逆ではないかと考える.「国民皆保険」という言葉が外れていることも問題だ.さらに,「社会保障制度改革国民会議」のメンバーには日医・日歯などの医療関係者を除外するなど,本質から外れた方策が採られているようで,看過できない.

基本診療料に対する要望(大阪府/天羽 隆代議員)
 現在の初・再診料では処置の算定のない患者は赤字となり,個人の経営努力ではもはや限界である.財源がなく難しいことはわかっているが,国民の安心,安全の要望に応えるため,初・再診料は医科歯科同等であるべき,と主張し続けることが大切ではないか.
堀 憲郎常務理事:初・再診料の引き上げについては繰り返し要望している.帝国データバンクの統計によると,過去10年間における(医療機関の)倒産のうち1/3が歯科であり,その特殊性を訴えている.他科に比べて歯科だけが初・再診料が低いことは合理的な理由がない,と問題提起している.診療報酬改定のたびに「包括化」の名の下にいろいろな項目が初・再診料に入ってきているが,歯科医療の特殊性があるとはいえ,中身と評価が見合っていないので是正を求めていきたい.

消費税における損税について(北海道/鮫島道幸代議員)
 平成26年4月に税率8%,27年10月に10%とする消費税増税法案が成立した.税率5%の現状においても,すでに損税が発生しており消費増税によりその拡大が予想される.社会保険診療は非課税の取り扱いとする現行においては,税の問題は診療報酬の中に持ち込むべきではないと考えるが,答弁をお願いしたい.
溝渕健一常務理事:1医療機関あたり年間80万円程度,仕入れ面で消費税を払っている.控除ができない部分は70万円くらい,診療報酬で補填されている部分は35万円程度であるため,1カ月あたり3万円程度の損税が出ている.現在,中医協で損税が少なくなるように検証している.日医,病院協会は(社会保険診療を)「課税にせよ」と主張しているが,日歯としては,まず8%の税率においても非課税の中でひずみをなくす方法を考えていく.

ライフステージ毎の関連法について(神奈川県/井田満夫代議員)
 「歯科口腔保健推進に関する法律」の基本理念を考えると,母子保健法,学校保健安全法,労働安全衛生法,高齢者の医療の確保に関する法律など,各種の法律を手直ししないと,ライフステージ毎の歯科における保健指導,健康診査を全国的に確立することは困難と思われる.日歯の見解を示していただきたい.
佐藤 保常務理事:「歯科口腔保健推進に関する法律」の法的記載事項の検討にあたって示された重要な命題は,(1)“すべてのライフステージに沿って”行うこと,(2)関連する法規・制度との整合性をとること,であった.現行制度で最も重視すべきものとしては,「健康日本21(第2次)」となる.平成25年度,何をどう進めていくかというと,まず「調査研究」が一番先にきている.重要な問題としては,「特定健診・特定保健指導」が歯科にとって希薄な部分となっている点である.とりわけメタボに関しては,「咀嚼機能」の問題が明確になることにより病名が1つ増えれば,健診が1つ増えることとなる.

 1日目には,新法人への移行に関する協議がなされたほか,2日目には平成24年度日本歯科医師会会員有功章授賞式が行われた.受賞者は以下のとおり(敬称略).

○会員有功章授賞規則第4条第1項第一号該当
・髙森經義(熊本県・74歳)
・山口悦子(沖縄県・76歳)

○会員有功章授賞規則第4条第1項第三号該当
・髙橋韶光(神奈川県・77歳)
・箱崎守男(岩手県・68歳)

(2012.09.20)

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