歯科医療に関する文言の記載・通達の広がり(日歯)

 
 

会見後の質疑応答では,次期医療計画について「精神疾患(特に認知症)」と歯科との関わりようも話題に上った.佐藤常務はまず“かかりつけ歯科医”として地域で機能している歯科医院の役割を示し,「包括的・継続的に1人の患者さん,あるいはその家族をも診ることができる歯科医院は,精神科など専門医療機関への橋渡しが可能な特性をもった医療機関である」とまとめた.

日本歯科医師会(大久保満男会長)は7月19日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.紹介された内容は以下のとおり.

三党合意に関する問題点
 日歯は,社会保障と税の一体改革にまつわる三党合意に関して,「五 医療保険制度」の中の「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図る」という文言に強い危機感を表明した.これは今年2月に閣議決定された大綱には記載がなかった内容であり,また,かつての小泉政権下の改革でも同じような記述が用いられたことで,軽医療の保険免責制や,最終的には混合診療の全面解禁を目的とした施策案につながった経緯があるとし,今後の医療保険制度についても同様の議論が交わされるのではないかと懸念.大久保会長は,「連盟とも協同して社会保障の後退を防ぐべく必要な対応を進めて参りたい」と述べた.

がん対策推進協議会における対応
 6月8日に閣議決定された「がん対策推進基本計画」の変更について,初めて歯科との連携に関する文言が盛り込まれた.具体的には,①職種間連携における歯科の役割,②周術期における口腔ケアの必要性,③歯科医師を含む医療従事者の人材育成の課題,④希少がんの1つとしての口腔関連がんの記載,の4点である.日歯は,昨年度にがん対策推進協議会やがん対策推進室(当時)宛に提出した要望書の内容が反映された,と評価している.

次期医療計画の策定についての対応
 第5次医療計画(平成18年〜23年)の次期に当たる医療計画の検討は,東日本大震災を受けて,5事業のうち災害医療に関して計4回の別途検討会が開催された.また,この次期医療計画は平成23年度に諮問答申され都道府県に周知されたが,これまでまったく記載のなかった「歯科」に関する文言が,本年3月30日の局長通知では20数カ所の記載として盛り込まれた.これを受けて,都道府県は平成25年度に新たな医療計画を策定する.

都道府県歯科医師会と海上保安庁との協定
 日歯は昨年3月23日に,海上保安庁と海上保安官が扱うご遺体の身元確認についての協定を結び,平成23年度には第一管区〜第十一管区ごとに,それぞれ担当の都道府県歯科医師会が海上保安庁と協定を結んでいる.この協定は単年度の契約であるため,本年度の名簿はまだ出揃っていないが,従来は海上保安庁とすべての管区で協定が成立していたわけではなく,先の震災による教訓を生かして今後も連携を深めていきたいとした.

スポーツデンティストの養成開始が決定
 7月11日,日本体育協会理事会の承認を経て「公認スポーツデンティスト」の資格が新たに創設された.今後は日歯と協同で指導者の育成に当たり,平成25年度から本格的に養成が開始される.養成期間は2年で,基礎科目(25単位/25時間・約4日間の受講予定)と次年度の応用科目(21単位/23時間予定)の講習を受け,資格を得た者が公認スポーツデンティストとなる.最終的には国体等での活動も視野に入れ,スポーツ歯学の重要性とともにさらなる認知度の向上を図っていく.

(2012.07.24)

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