“生きる力を支える歯科医療”の軸は揺らがない(日歯)

 
 

インプラントに関する問題について,さまざまな調査報告書が出され日刊紙等でも報道がなされているが,大久保会長は「抗議ではなく,日歯としての見解を改めて呈示することで対応とする」とした.手術後に長期経過した後の不具合まで“事故”として括られてしまう表現の問題や,口腔内という特殊な環境下,維持には患者の協力が不可欠なこと等を説明し,理解を求める一方で,リスクの低減を目指し歯科医師にも引き続き研鑽を求めていく.

日本歯科医師会(大久保満男会長)は6月28日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,現在衆議院を通過し参議院での審議を控える消費税増税関連法案について,増税か否かという政治的な決断は国会の議論の範疇であると前置きしつつ,「大切なことは,仮に増税が決まったとすれば,それに見合うだけの充実した社会保障として,国民にどのような歯科医療政策を展開できるかということである」と述べた.日歯は従来から超高齢社会に向けて戦略的なビジョンを作成しており,混乱する政局を今後とも注視していく反面,「“国民に歯科医療を提供し,国民の健康を守る”というわれわれの使命がぶれることはない」と強く語った.また,他に紹介された内容は以下のとおり.

在宅医療連携拠点事業の成果報告
 超高齢社会の日本では,他の先進諸国に比べて一般の病院施設で亡くなる方が非常に多く(アメリカの5倍,ドイツの3倍),厚労省の在宅医療介護推進プロジェクトをはじめ,①チーム医療を担う人材の育成,②実施拠点となる基盤の整備,③個々の疾患等に対応したサービスの充実・支援,という三本柱のもと在宅ケアを支援する取り組みが広がっている.このうち②に関して,日本歯科総合研究機構が実施する「在宅医療連携拠点事業」の平成23年度最終報告が行われた.病院や医師会など全国10カ所の拠点において事業が行われ,中間報告の時点では歯科に関する記載がまったく見られない拠点があったものの,最終報告ではすべての拠点において“歯科医師会との連携”など,歯科との関与を示す記載が認められた.また平成24年度の同事業では,全国105カ所,歯科からは「京都府歯科医師会」が連携拠点として採択された.

地域保健健康増進栄養部会の報告
 同月20日に開催された同部会では,地域保健の推進,歯科口腔保健法,健康日本21(第2次)に関する基本的事項の方針等について諮問・答申がなされた.なかでも歯科口腔保健の推進に関する基本的事項については,健康日本21との密な連携を念頭に置きながら,単にう蝕や歯周病の治療だけにとどまらない「“食べる機能”としての歯科の重要性」が,初めて取り上げられることとなった.

監査室と日歯が勉強会を開催
 厚労省の医療指導監査室と日歯との第一回目の勉強会が,同月22日に開催された.今後は指導・監査にまつわる意見交換を行いながら,2カ月に1回の開催頻度で進めていきたい,としている.

診療報酬と消費税のあり方について
 ①過去2回の改定では十分に控除対象外消費税を把握しきれておらず,補填が不十分であった.なぜ不足が生じたのか,現在ではどのくらいの補填漏れがあるのか,実態調査を求める.②国会の議論では高額の投資に対する税制要望等が主のように思えるが,歯科ではむしろ日々の仕入れで発生する損税のほうが問題意識として高い.対応を望む.③過去2回の改定後,結局どの項目に診療報酬が補填されているのかが曖昧なままである.たとえば基本診療料に対して一括で補填するなど,目に見える形での対応を求める.以上の3点が議論の基本方針として述べられた.
 また同月27日には,中医協の二号委員7名・専門委員2名の連名で「国家公務員の給与の削減特例」に対する要望書が関係省庁・団体宛に提出されたが,これは今回の診療報酬改定の重点課題(負担軽減・処遇改善)とは相反する施策が見受けられたためである,と説明した.

(2012.07.10)

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