日本の歯科医療の質を担保する歯科医師国家試験(日歯)

 
 

平成24年度日歯生涯研修セミナーは,今月27日から例年どおり開催される.特色として「生きるよろこびを支える歯科医療」をテーマに掲げ,すべてのライフステージの健康に寄与することを目的としてプログラムを作成.また,日歯は今年度から講演項目すべてのDVD化を図り,遠方で開催された研修の内容も視聴できるようにすることで,会員の全項目受講を強く望んでいる.

日本歯科医師会(大久保満男会長)は5月24日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,現在国会で議論されている社会保障と税の一体改革のうち,消費税問題について触れ,医療提供側としての立場や非課税制度などの問題も含めて「“国民のための歯科医療の確立”という面からどう考えていくのか,政局のなかで見極めていかなければならない」と述べた.また,他に紹介された内容は以下のとおり.

指導大綱に関する要請書を提出
 日歯は同月23日,厚労省の医療指導監査室長宛てに“指導大綱に関する要請書”を提出した.現在の指導大綱は施行からすでに15年が経過しているため,この間の社会情勢の変化等を踏まえる目的から,①個別指導の実施にあたっては,指導大綱の精神に則った懇切丁寧な教育的指導を全国の地方厚生局に改めて徹底させること,②定期的に日歯との協議の場を設け,相互に必要な内部通知など円滑な指導実施に向けた体制を構築すること,の2点を求めている.監査室からはおおむね合意が得られており,協議の場としては勉強会を想定.代議員会や会長会議等でも毎年議題にのぼる指導問題について双方の共通認識を醸成し,改善に取り組んでいきたい,とまとめた.

平成24年度災害コーディネーター研修会
 日歯は平成22年度から災害コーディネーターの養成に着手してきたが,各都道府県歯科医師会から要望を受け,24年度は全国7地区で研修会を開催する.先の東日本大震災を経て浮き彫りとなった,①行政や医療団体および各省庁との連携,②緊急性の高い歯科医療や避難所等における口腔ケア,③身元確認作業の実施,④地理的要因を踏まえた隣県歯等との協力関係,の4つに焦点を当てて研修を実施する.コーディネーター機能は対策の領域や県全域・郡市区ごとに別々に求められるため,現時点ではまず災害時対策全般に精通する人材の育成を想定.また,他にも研修テキストに全国統一書式のデンタルチャートを改めて記載するなど,課題の改善を目指していく.

歯科医師需給問題について
 国家試験の合格率は前年並みの71.1%,大学入試の結果については定員充足率の二極化が聞かれるなど,昨今“質”の問題が取り沙汰される歯科医師需給問題に関して,日歯は文科省に「入試結果で大幅な定員超過が認められる場合には,執行部としてしかるべき意見を各行政や私大協等に要請・意見書として提出する」との意向を示した.また,4月18日付で報告書が提出された歯科医師国家試験制度改善検討部会の内容にも触れ,日歯としては,①国家試験は選抜試験ではなく資格試験である,②医科と歯科の合格基準が乖離していることは問題である,というスタンスから発言し文言を修正した.なかでも出題基準のあり方については“歯学教育の一連の整合性を考慮した総合的な検討が必要である”と,たとえば4年次の共用試験を準国家試験的な扱いにして座学中心の国試対策負担を軽減させるなど,5・6年次における参加型臨床実習の推進に向けたさらなる議論が求められる.

(2012.05.30)

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