新年度の課題は“国民へのアピール”(日歯)

 
 

写真は3月12日,東日本大震災における身元確認作業の功績が認められ,警察庁長官から贈呈された感謝状.日歯のほかには法医学会や防犯協会,精神医学会の計4団体が表彰を受けた.

日本歯科医師会(大久保満男会長)は3月22日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,先月発刊となった書籍『生活の医療』について触れ,「現在は会員の先生方に興味を持って読んでいただいている」と述べる一方,本来の対象である“国民”に向けてはまだまだ周知が足りない,と課題を挙げた.歯科口腔保健法の成立もあり,歯科医療の重要性は徐々に社会へ浸透しつつあるが,国民が歯科医療に対して抱くイメージは未だ限定的であるのが実情である.
 この“国民に対して歯科医療をどのようにアピールしていくか”という広報戦略に関しては,第170回代議員会で可決・確定した平成24年度事業計画内でも中心的な柱として位置づけられており,予算上でも最も大きな増額となっている.世界に類を見ない速度で進行しているわが国の超高齢社会が抱える問題は,もちろん医療だけに限ったものではないが,地域共同体の維持など単に“口の中の病気を治す”だけではない歯科医療の在り方について,国民に広く知らしめていくPR活動を来期の大久保執行部の最重要課題として据えた.また,他に紹介された内容は以下のとおり.

役員勉強会を実施
 日歯は,平成24年度のテーマを「国民に向けての多角的な広報の展開」とし,4月18日・19日の2日間で例年どおり役員勉強会を実施する.今回の勉強会では,広報といえども業界の枠組みの中に収まりがちであったという過去の反省を踏まえ,医療界以外の外部から講師を招いて講演やディスカッション,グループミーティング等を行う.

TPPを考える専門分野会議
 同月13日,三師会と看護協会が意見発表に招かれ,発言した.会議にはすでにTPP交渉に参加,あるいは二国間交渉を進めている国々の関係者が出席し,それぞれの国内事情を語った.日歯はこれまで「TPPの議論の中に医療を含めることは反対である」と一貫して主張,大久保会長は「公的な保険制度と民間企業の保険を同等に扱うことはナンセンスだ」と社会保障の意義を訴えているが,会議では非関税障壁による医療技術の独占化など,交渉参加国内ですでに起きている問題や懸念が紹介され,大きな注目を集めた,

東日本大震災関連(警察歯科)
 日歯によると,被災3県へ身元確認作業のため出動した歯科医師は延べ2,600名にのぼり,およそ8,500〜9,000のご遺体の歯科所見を採取・照合した.身元確認に際して非常に難儀したのは生前歯科所見の流出であり,収集が不可能な例も多く,収集が可能であってもカルテ起こしやソフトを用いた情報入力等の作業に多くの時間を割かれた.また,日歯をはじめ警察庁,厚労省,歯科医学会による検討会に基づく陳情書が同月15日付で民主党本部へ提出され,生前歯科所見データベース化等の実現に向けた実証事業に対する予算措置を要望した.

(2012.04.06)

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