行政に歯科医師のさらなる参画を強く要望(日歯)

 
 


薬事法等改正に関しては,行政に対応を求めることはもちろん,国民に対しても,薬事制度全般や医薬品の使用等への理解を求める方策が必要である.患者の治療効果への過度の期待が引き起こす医療訴訟や,それに伴う医療側の萎縮診療を避ける意味でも,「インフォームドコンセントに基づいた,患者の医療への積極的参加・理解等の文化を醸成する努力も不可欠である」と述べた.

日本歯科医師会(大久保満男会長)は12月15日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.同日,大久保会長は次期診療報酬改定に向けた会議のため不在であったが,代わりに挨拶に立った近藤勝洪副会長は「特措法や事業税,受診時定額負担など税制の問題にはある程度の見通しが立った」と前置きしたうえで,あとは「プラス改定をいかに勝ち取るか」が焦点であると述べた.財務省の意向など,改定率の引き上げに関しては依然として厳しい状況にあるが,日歯役員が一丸となり,日歯連盟とともに“国民に提供する歯科医療を守るため”連日陳情を続けている.また,他に紹介された内容は以下のとおり.

薬事法等改正の方向性(たたき台案)等に対する意見
 日歯は,厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会における薬事法等改正の方向性(たたき台案)等について,「歯科医療では薬事法の対象となる医療機器や医薬品を医科と同じく日常的に使用し,安全対策に努めているにもかかわらず,薬事法の改正に向けた同検討部会にこれまで日歯役員など歯科医師の参加がなかったことは誠に遺憾である」と強く指摘.歯科医療の特性や,中小零細企業がそのほとんどを占める歯科産業界の特殊性なども交えながら,現行の薬事法に基づく制度等に関して意見を述べた.
 たたき台案に関しては,医薬品等への添付文書,医薬品等行政を監査する第三者組織の設置,医療上必要性の高い医薬品等の迅速な承認などの項目におおむね賛同を示し,添付文書に最新の知見を反映する仕組みについては,臨床現場に混乱を来さないよう医薬行政上の指導が必要であるとした.また,審査業務の迅速化のため審査官の増強や質の向上,審査環境の整備として明確な審査基準の公表等を求めた.特に後者は,歯科関連企業の新規医療機器・医薬品開発への意欲を左右する非常に重要な事項であり,輸入品が半数を占める現在の国内シェアを回復し,国際競争力を高めるためにも,国内臨床試験をサポートするインフラ整備と併せて取り組んでいく必要があるとした.

がん対策における医科歯科連携の充実等について
 国立がん研究センターと日歯の協働事業など,がん患者への口腔衛生指導の重要性は年々周知されつつあるが,厚生労働省のがん対策推進協議会にはこれまで歯科医師が参画していない.今後は緊密な医科歯科連携が望まれ,また,白血病や腎がんと同等の罹患率・死亡率とされる歯科医学領域におけるがんの早期発見・治療の向上も求められることから,日歯は同協議会ほか健康局がん対策推進室および医政局指導課に宛て,①がん治療に付随する口腔や呼吸器合併症のリスクを減らすための口腔ケアの推進および推進のための研修の推進,②がん対策推進協議会への歯科医師委員の参画と,次期がん対策推進基本計画における歯科・口腔領域の取り組みの位置づけ,③次期医療計画作成指針等におけるがん対策をはじめとした地域連携体制への歯科医療機関の役割の明示,をまとめた要望書を提出した.

東日本大震災関連
 平成23年度第三次補正予算案は11月21日に参議院本会議での可決を経て成立したが,その中で,休日等歯科診療所および在宅当番医制歯科診療所が,医療施設等災害復旧費補助金の対象に初めて追加された.また,柳川忠廣常務は12月の初めに大久保会長と被災地を訪れ,岩手県大槌町の仮設診療所の様子や,釜石市で稼働している日本大学松戸歯学部所有の診療バスの様子など,視察の状況を説明した.なお,10月から実施されている「心のケア」相談窓口プロジェクトについては,現時点での認知度の低さを課題に挙げながらも,現地で被災した歯科医療従事者もケアの対象に含めてさらなる周知を図り,長期的な視点で事業を継続していく,とまとめた.


(2011.12.21)

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