国民の健康を担う医療の公益性を守るために(日歯)
8月に成立した歯科口腔保健法の中にも“歯科医療が国民の健康増進に明確に役立つ”ということが明記されている点を挙げ,「この法律の精神を生かして,日歯連盟とも協力しながらしっかりとした対策を立てていきたい」と述べる大久保会長.
日本歯科医師会(大久保満男会長)は11月24日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,社会保障と税の一体改革,次期診療報酬改定,TPP交渉など,日歯が現在直面している課題はすべて「医療の公益性をどう守っていくか」という点に集約されると述べた.そのうえで,次期診療報酬改定に関しては「高齢社会の中で在宅が主題となるのは理解しているが,それがすべてではない」とし,「慢性期疾患を抱える高齢者の健康に医療と介護を通じて貢献し,日歯としては歯科医療を通じて可能な限り健康寿命を延ばしていくことが最大の課題である」との見解をまとめた.また,続けて紹介された内容は以下のとおり.
次期診療報酬改定について
東日本大震災の影響や復興財源確保の必要性もあり,特に今年は「社会保障の財源が少ない」と言われる非常に厳しい状況となっている.また,そもそも日医が当初に「次期改定は見送るべし」との意向を表明したこともあって,中医協内でもプラス改定を求める声は前回ほど大きくはないのが実情である.そのため,日医の挙げた「改善を求める14項目」の中でも具体的な数字については話題に上らない可能性もあるが,歯科医療に関しては引き続き,基本的な歯科医療技術に対する適切な評価を中心に,診療報酬改定率の引き上げを求めていく.
社会保障・税に関する番号制度に対する見解
日歯は政府の検討案に一定の理解は示すものの,特に「社会保障分野における現物給付(医療・介護等)での利用は,情報が漏洩した場合の人権侵害がきわめて著しい」という危惧から,当該範囲への番号制度導入は時期尚早である,と反対の意を表明している.
医療経済実態調査(個人歯科診療所)に対する見解
平成22年時点で歯科診療所数の84%を占める個人歯科診療所は,これまで日本の歯科医療の中心的役割を担ってきたが,平成23年6月の損益差額がついに100万円を下回った.昨今の厳しい経済状況下で個人歯科診療所の経営努力や経費削減努力はもはや限界に達しており,安心安全な歯科医療供給体制確保のためにも喫緊の対応が望まれる.
医療計画の見直し等に関する検討
疾病または事業ごとの医療体制構築にかかわる指針について,このたび従来の四疾病に5つめの「精神疾患」が加えられ,新たに医療計画が検討されることになった.また五事業のうち「災害時における医療」については,東日本大震災の教訓を踏まえ,災害拠点病院や災害時の医療提供体制(DMAT:災害医療派遣チームの在り方,中長期の医療提供体制)等に対する検討がなされ,災害医療を支援する団体として,新たに日歯が明確に位置づけられた.
生前歯科所見のデータベース化について
8月に警察庁,厚労省,日本歯科医学会と日歯が共同で検討会を立ち上げた.歯科所見は,指紋やDNA情報等とは対照的に国民のデータベース化への抵抗感が少なく,災害時や平常時における身元確認での有効性も十分に示されている.検討会として,最終的には政府機関に意見書を提出したいという目標を据えながらも,国や第三者機関によるデータセンターの設立やモデル事業的な実証実験の必要性など,今後の展望を交えての中間報告とした.
(2011.11.30)
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