日歯連盟が第114回評議員会を開催

 
 


次期診療報酬改定,参議院選挙に関する質問や要望の多かった評議員会の様子(円内は髙木会長).なお,当日は第178回臨時国会の最終日であったが(会期は同日,9月末まで延長が決定),終盤には公務を終えた西村まさみ参議院議員も駆けつけた.
日本歯科医師連盟は9月16日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第114回評議員会を開催した.はじめに挨拶に立った髙木幹正会長は,8月に成立・施行した歯科口腔保健法について触れ,厚生労働省に推進室が設置されたことに一定の評価と感謝を交えながらも,引き続き「理念法ではあるが,実行法に限りなく近づけられるよう日歯とも連携して活用して参りたい」との決意を改めて述べた.
 また,来賓挨拶に立った日歯の大久保満男会長は,連盟との役割分担を掲げつつ「切れ目のない検診体制をどう作っていくか」と今後の課題を挙げ,国会報告に立った石井みどり参議院議員は,スポーツ基本法などにも触れ「歯科界のさらなる発展に尽力して参りたい」との意欲を示した.
 続いて平成23年度日本歯科医師連盟褒賞授賞式が執り行われ,会務報告,会計報告,監査報告の順に各種報告がなされた後,事前質問受付および議案審議に入った.平成22年度一般会計収支決算など計5議案が上程されたが,すべて執行部提案どおり可決された.なお,会務運営関連事項,協議関連事項への事前質問の一覧は下記のとおり.

○事前質問一覧
〔会務運営関連事項〕
・次期診療報酬改定に向けた日歯連盟の基本的な取り組み方について
・診療報酬要望の根拠の考え方について
・歯科医療費について
・大規模災害時における対策マニュアルの作成について
〔協議関連事項〕
・次期参議院議員選挙について
・参議院選挙準備日程について
 関連質問に対する答弁も含め,以下に概要を紹介する.

次期診療報酬改定に向けた日歯連盟の基本的な取り組み方について(鹿児島県/曽山幸一議員)
 平成22年度診療報酬改定において,歯科診療報酬は2.09%のアップが実現した.そのうえで,より質の高い歯科医療を国民に提供するためにも,次期診療報酬改定においては“初診料ならびに再診料を医科並みの点数に引き上げる要求”に的を絞り,訴えてはどうか?
島村 大理事長:平成22年度の診療報酬行為別の調査結果に基づくと,実現には4.88%の引き上げ率が必要になる.これを目標にはしたいが,前回改定の恩恵を会員が本当に受けられているのかという懸念もあり,初・再診料の引き上げのみに要求を絞るか否かとは一概には言えない.連盟としては確かに重要な課題であると捉えるが,社会保障と税の一体改革や窓口定額負担増,算定要件の問題など,日歯と連携し,総合的に考えて戦略を立てていきたい.

診療報酬要望の根拠の考え方について(静岡県/犬塚勝昭議員)
 日本の医療費は年々増加しているが,その中に占める歯科医療費の割合は横ばい,もしくはやや減少傾向にある.これは先進諸国と比べても3〜6倍安い金額であり,EBMに基づいた適正額数値を割り出し,診療報酬要望の根拠となるよう,連盟は日歯や関係諸学会とも連携しながら厚生労働省や政府に働きかけていくべきではないか?
島村 大理事長:外保連の平成22年度調査データが診療報酬改定に採用されたこともあり,その手法を参考に,日本歯科医学会のタイムスタディ調査を出来る限り活用して,理論構築をしていきたい.もし採用されない場合には,原因を突き止め,日歯とともに精査していく必要がある.また,改定率に関しては「中医協ではなく政府が決めていく」ことになっており,連盟の果たす役割は非常に大きい.
髙木幹正会長:改定に関しては歯科技術の単なる評価だけにとどまらず,報酬のパイを広げていくことが必要で,学会・日歯・連盟の三者連携はきわめて重要であると承知している.

歯科医療費について(長野県/永島康弘議員)
 総医療費における歯科の割合減少の最大要因は,予防活動の成果により歯科疾病構造が変化したにもかかわらず,歯科診療報酬体系が旧態依然としている状況にあると思われる.この体系を現状に沿うよう政治的に働きかけるべきではないか? また,長年の悲願である“医科並みの初診料・再診料引き上げ”に,今回成立した口腔保健法の活用も含め,連盟の力を発揮するべきではないか?
島村 大理事長:歯科に関しては,萎縮診療に近い状況が多々あると思われるので,その点を改善していきたい.また診療報酬体系については現況に合わせて精査し,改定項目を検討していくが,次回は同時改定であることから介護報酬に重きが置かれる可能性もある.その場合は主に在宅診療など,どの項目に焦点を当てていくか歯科界ほか外部の有識者も含め,さまざまな方の意見を聞きながら進めていく.
髙木幹正会長:超高齢社会における歯科医療の確保という目標に向けて,連盟としては改定ごとの先送り対応ではなく,それぞれの改定時期において連続性のある対応をしていきたい.歯科口腔保健法の成立や8020運動の奏功などを指針にしながら,国民のニーズに合わせて果たす役割を変化させ,政治的アプローチを進めていきたい.

大規模災害時における対策マニュアルの作成について(山梨県/諸角三千夫議員)
 今回の東日本大震災においても対応の遅れが指摘されているが,大規模災害を想定した法的対策の整備は急務である.歯科においては,身元確認・緊急治療の歯科医師派遣や,診療車の出動要請,保険証や住民票を失った被災者の治療,物資輸送や見舞金など,起こりうる状況への組織立った対策をあらかじめマニュアル化しておくべきではないか? 阪神淡路大震災や新潟中越地震,今回の大震災を教訓に今後対応を急ぐべきではないのか?
島村 大理事長:日歯の対策本部に加わり,息の長い支援を目指して対応中である.事前のマニュアル作成については大枠ならば可能であるが,詳細は災害の規模によって異なるため,日歯とも協議をしながら再度検討していきたい.
髙木幹正会長:歯科が緊急医療・災害医療の中で,政策医療に関わっていないことがそもそも問題であり,引き続き声を上げていく所存である.また身元確認の派遣は警察歯科医会の協力があった分,むしろ口腔ケア関連の派遣のほうが大変であった.ある程度のシステム構築はやはり必要で,日歯とも連携して早急に進めて参りたい.

次期参議院議員選挙について(茨城県/比企利枝子議員)
 ①職域代表候補者を擁立する考えはあるか? ②選考委員会の設立等,候補者の選定は従前どおりの方法で実施されるのか? ③平成25年夏の選挙に向けて,具体的にはいつ頃から指導する予定なのか?
参議院選挙準備日程に関して(長野県/塚越正明議員)
 2013年7月に行われる第23回参議院議員通常選挙において,候補者を立てて戦うならば,準備はどのように・いつ頃から取り掛かるのかを伺いたい.
髙木幹正会長:まだ決定ではないが選挙は行うべきと考えており,職域代表を擁立することは非常に大切である.会員の一致団結が結果を左右することからしっかり準備をしていきたいが,次期には診療報酬・介護報酬の同時改定や税制の見直し等が控えているため,スケジュールとしては例年どおりを予定しつつ,日歯とともに政局を見極めながら対応していきたい.候補者は政党ありきではなく人物本位で総合的に判断し,日歯・連盟の方針をよく理解していただける方を選考委員会が選出,最終的には評議員会の意見を仰ぐ.
寺尾隆治副会長:従前から現行の選挙規則の不備が指摘されているなか,地区制と選挙関連規則の検討を優先的に進めている.意見を反映させながら改訂を進め,来年3月の評議員会にて議案提出の予定である.
(2011.10.05)

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