日歯が第169回代議員会を開催
冒頭の挨拶では,全会一致で可決した歯科口腔保健法について,過去から現在まで各都道府県・郡市区歯科医師会の会員が地域住民に対する健康保健活動を続けてきたが,これらの活動がなければ,「この法律(案)を提出することも,可決されることもなかった」と述べた大久保満男会長(円内左).円内右は来賓として挨拶した石井みどり参議院議員.
日本歯科医師会は9月8・9日の両日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第169回代議員会を開催した.大久保満男会長は冒頭の挨拶で,今回の東日本大震災への対応についてふれ,「被災者の健康が守られなければ,被災地の復興はあり得ない.被災者の健康こそが被災地の復興の大きな力となる.緊急の時だけでなく平時の歯科医療を国がしっかり守ることが国民国家の大きな基盤である」と述べた.
来賓には,石井みどり参院議員(自民党),川口 浩衆院議員(民主党),大久保潔重参院議員(民主党),水野智彦衆院議員(民主党),髙木幹正日歯連盟会長らが出席した.その中で,職域代表である石井みどり参院議員は,今国会で成立した歯科口腔保健法を「いかに実効的に先生方の臨床にフィードバックするかが勝負となってくる」と述べた.
続いて,一般会務,社会保険関係,会計現況の各種報告が行われ,議案審議に入った.審議では平成22年度の会計歳入歳出決算など6つの議案が上程され,すべて執行部提案どおり可決された.
その後,各地区代表事前質問と個人事前質問が行われたが,質問の一覧は下記のとおり.
○地区代表事前質問の一覧
近北地区「日本歯科医師会の三層構造における会員資格について」
北海道・東北地区「東日本大震災今後の課題」
東海・信越地区「大久保会長が,今年度日本歯科医学会学術講演会の基調講演で示した『未来の目的と手段の明確化』及び『ビジョンを戦略的に追求する』について」
中国・四国地区「指導大綱の運用上の問題点について」
東京地区「保険の指導体制について」
九州地区「日歯におけるフッ化物応用に関する今後の展望について」
関東地区「政府の社会保障IT戦略の方向性について」
○個人事前質問の部門ごとの一覧
中医協・診療報酬関係……5問,医療保険・制度関係……8問,地域保健・産業保健関係……9問,学術・生涯研修・国際渉外関係……2問,情報管理・調査関係……3問,医療管理・税務関係……2問,広報関係……2問,学会関係……1問,その他……6問
今回の地区代表事前質問と個人事前質問では,「歯科口腔保健法」などに関して多くの質問が寄せられたが,その中から一部を抜粋し概要を紹介する.
東日本大震災今後の課題(北海道・東北地区代表/箱崎守男代議員)
3月11日発生の東日本大震災では,多くの歯科診療所が被災を受けた.地域の歯科医療の確保,そして被災会員の支援のために今後の課題について伺いたい(①医療施設等災害復旧費補助金交付要綱に関わる歯科の位置づけについて,②二重ローンへの対応,③三次補正に向けて全壊,全焼の歯科医療機関の再建のための財源措置,④診療報酬の算定<(1)歯科訪問診療算定要件「常時寝たきり状態」という文言の削除,(2)補綴物維持管理料の期限の撤廃>).
柳川忠廣常務理事
:要綱に記載されていないのは歯科だけなので,再度全力で厚労省に交渉したところ,三次補正要望の中で「前向きに検討する」との回答になった.三次補正も今週が山場との認識で取り組んできた.既存債務の買取・利子の補助,リース料の補助の要求もあり,三次要望に追加した.歯科訪問診療料の算定要件の緩和は算定の対象拡大となるため厚労省との交渉は困難だが,被災地に限定しての対応などを検討する.
24年度診療報酬と介護報酬の同時改定について(埼玉県/谷野日出人代議員)
細川律雄(前)厚労相等関係大臣は,平成24年度診療報酬と介護報酬の同時改定の実施を確認しているが,医師会等の調整の難航が予想される.生活を支える歯科医療の充実を図り良質な歯科医療の提供につとめ,さらには歯科医業経営の安定化のためにも適切な診療報酬の確保は必要である.すでに9月となり,改定の動きが始まっていると思うが,この同時改定に向けた今後の具体的な戦略を示していただきたい.
大久保満男会長
:平成22年度の改定では,入院を中心とした急性期の医療に多くの点数が配分された.当然,平成24年度は,在宅だけでなく外来も含めた高齢者を中心とした慢性期疾患に点数が重点配分されるだろう.われわれとしては堂々とプラス改定を要求していきたい.
「歯科口腔保健の推進に関する法律」の成立を受けて(鹿児島県/橋口哲彦代議員)
「歯科口腔保健の推進に関する法律」が成立したが,これから歯科口腔保健の推進に関する施策をどのように具体化していくかが,大きな問題だと思われる.さまざまなビジョン・構想があれば示してほしい.また今後,条例制定を目指す県もあると思うが,国の法律が制定されたことで,(地方自治体の)行政当局があまり前向きではない面がみられる.このような状況について日歯の見解を示してほしい.
大久保満男会長
:歯科口腔保健法は理念法であるので,具体的な施策を作っていきたい(特に成人期・地域・企業健診など).“上位法である国の法律ができたから条例がいらない”との考えは誤っており,各都道府県での条例も当然必要である.来年2月11日,歯科口腔保健法に関するシンポジウムも開催されるので,国民・医療関係者へのアピールの場としていく.
最近の製薬会社のテレビCMにおける日歯の対応について(兵庫県/神田孝平代議員)
最近,「お医者さんと一緒に……」とか「お医者さんに相談しよう」というメッセージを使った製薬会社のテレビCMが多く見られる傾向にある.しかしながら,歯科分野においては残念ながら,製薬会社との協力連携を謳ったテレビCMは見当たらない.国民に歯科医療の重要性を説き,歯科受診率の向上を目指す日本歯科医師会は,各製薬会社・歯科関連商品販売会社に対して国民と歯科医師との関わりをしっかりと訴えるために,どのような対応をしているのか伺いたい.
倉治ななえ常務理事
:昨年,AKB48が出演したテレビCMを日本歯科医師会独自の予算で作製・オンエアーし,好評を博した.(今年度)予算には計上していたが,東日本大震災の影響でテレビCMの製作は白紙の状態でストップしている.歯科口腔保健法が成立したこともあるので,「歯医者さんに相談してみよう」といった啓発CMを作ったほうがよいという声があれば,積極的に作りたい.
1日目には,日歯の公益法人化に伴う福祉共済制度の見直しおよび保険業法への対応や新法人への移行に関する協議がなされたほか,2日目には平成23年度日本歯科医師会会員有功章授賞式が行われた.受章者は以下のとおり(敬称略).
○会員有功章授賞規則第4条第1項第一号該当
・髙良政利(沖縄県・84歳)
・林
昭(長野県・82歳)
○会員有功章授賞規則第4条第1項第三号該当
・織田英正(高知県・65歳)
・井関 功(和歌山県・78歳)
・堤 直文(熊本県・69歳)
・大塚 彰(岡山県・80歳)
・橋本 弘(神奈川県・70歳)
(2011.09.16)
>>>
戻る