財政・経済優先の社会保障政策には否を(日歯)

 
 


大久保会長は「震災対応は一段落しつつあり,被災地にも徐々に復興の兆しが見え始めてはいるが,引き続き地域歯科医療確保のために息の長い支援をして参りたい」と述べた.

日本歯科医師会(大久保満男会長)は8月25日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,平成24年度診療報酬・介護報酬同時改定について触れ「国民の健康に貢献するよりよい歯科医療を目指し,財源が厳しい状況でもきちんと要求は出していかなければならない」と,改定実施の有無にかかわらず今後とも準備を進めていく姿勢を示した.また,続けて紹介された内容は以下のとおり.

東日本大震災関連報告
 被災地における身元確認作業への歯科医師派遣は,日歯からの派遣については7月末で終了し,延べ1,095名となっている.しかし,作業後に懸念される派遣歯科医師・歯科衛生士らのPTSD(外傷後ストレス障害)や大うつ病等の精神疾患リスクを回避するため,日歯は国際医療福祉大学をはじめ専門諸機関と連携して“心のケア対策”活動を行うと発表した.主な活動内容には,①心のケア窓口としての情報提供や相談受付,②対象者のメンタルヘルスに関する実態調査の立案・分析・発表,などを予定している.なお,この活動は先述の身元確認作業従事者のみに限らず,避難所等における歯科保健医療従事者に対しても準じて行われる.
 また日歯からの義援金については,すでに7月末時点で被災各県への送付を完了していたが,このたび千葉に自宅をもつ都歯会員から大規模損壊(2件)および半壊(2件)の被災報告を受けたことにより,東京都歯科医師会へ義援金220万円を送付した.

中医協総会報告
 8月1日〜3日に行われた中医協委員による被災地訪問の際に,被災3県の歯科医師会から「仮設住宅等への訪問歯科診療に関わる算定要件の緩和」「カルテ等が滅失した場合の補綴物維持管理料の取り扱いの検討」「一部負担金の免除期限の延長」3点への対応について要望が出された.これを踏まえて同月24日の中医協総会では,①算定要件の緩和については,議論や調整を踏まえたうえで可能なものは速やかに実施する,②被災地における特例加算については,補助金や補償との役割分担や財源も含めて改定時までに検討する,との合意がなされた.

社会保障・税一体改革成案に関する見解
 日歯は同成案に対して,医療・介護サービス提供体制や,医療・介護保険制度のセーフティネット機能の強化を図る方向性については一定の理解を示すものの,「“公”が担うべき制度については,公的負担を当然のこととして確保すべきである」とした.具体的には,受診時定額負担の導入や70歳〜74歳の2割負担,共通番号制度の早期導入などに異を唱え,慎重かつ幅広い視点での議論が必要だとしている.また,安定財源の確保や医療・介護の提供体制についても触れ,「さまざまな観点から体制整備を進めていくことが,社会保障財源の有効利用につながる」との見解を示した.

(2011.09.06)

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