仮設歯科診療所,その役割の大きさを改めて実感(日歯)

 
 


窓口負担一律上乗せに関し,「患者は疾病に罹患した弱者であり,病院にしか逃げ場のない存在.そこへ負担を強いるやり方は国としていかがなものか」との疑問を呈し,政府与党に対して綿密な議論を求めていく考えを示す大久保会長(円内).

日本歯科医師会(大久保満男会長)は6月23日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.冒頭の挨拶で大久保会長は,政府与党による社会保障改革の一端である“窓口負担への一定額の上乗せ”に関して,「社会保障全体の財務配分に手を付けないで患者の負担だけを増やしていくのはおかしい」と,引き続き反対していく姿勢を示した.続けて紹介された内容は以下のとおり.

被災地における仮設歯科診療所
 大久保会長は先般,岩手県宮古市を訪問し,田老地区の仮設歯科診療所を視察した.第1次補正予算により岩手・宮城・福島の3県21カ所への建設は認められたが,現時点ではまだ国の予算が下りていない.しかし岩手県は県議会がいち早く補正予算を編成し,仮設診療所の建設を前倒しで決定した.田老地区はその先駆けで,6月1日からすでに診療を開始している.また,岩手県歯科医師会の箱崎守男会長から「仮設歯科診療所ができると聞いて,それまで虚ろだった被災会員の目も生き生きとしてきた」と聞き,大久保会長は仮設診療所の果たす役割の大きさを実感するとともに「地域の被災住民の健康確保はもとより,地域の歯科医療確立のために引き続き努力をして参りたい」と改めて力強く決意を述べた.なお被災地においては,必要器材を無償ないしは安価で融通するなど,日本歯科商工協会の貢献も大きいとのことである.
 第2次補正予算案に対して日歯は,第1次補正予算で対象となった方策へのさらなる補助のほか,被災施設・器材の修繕費など自力で診療所を再建しようとする会員への支援,多重債務の問題など,よりきめ細かな対応を求めていく考えを示した.

東日本大震災への対応状況・義援金の配分方法
 被災地への派遣状況は歯科衛生士中心のチームに変化しつつあり,歯科の役割が身元確認や緊急歯科医療から“口腔ケア”へとシフトしている.また今夏の節電対策として歯科診療所は小口需要家に当たることから,日歯は資源エネルギー庁から発行されている節電パンフレットを各都道府県歯科医師会へ宛てて送付した.
 また,義援金の配分方法については「詳しくは県歯に一任する」としているものの,日歯としては「診療所または自宅が半壊相当以上の被害を受けた会員に,より手厚く補償を行う」方針でいる.

小児ホスピス「海のみえる森」
 日本財団主催“Tooth Fairyプロジェクト”の一環である小児ホスピス“海のみえる森”を,大久保会長が視察した.日歯は同施設における口腔ケアの実施等,歯科界からのアプローチも含めて,今後も継続できるような体制づくりを整備し,協力していくという.

(2011.06.29
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