日歯が第167回代議員会を開催

 
 


冒頭の挨拶で「歯科に対する社会の期待は高まってきているが,その期待に応えられるかどうかが,歯科医療再生の正念場である」と述べた大久保満男会長(円内左).円内右は来賓として挨拶した石井みどり参議院議員.

日本歯科医師会は3月10・11日の両日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において第167回代議員会を開催した.大久保満男会長と各来賓による挨拶に続き,一般会務報告,社会保険関係報告,会計現況報告の各種報告がなされた後,議案審議が行われた.

議案審議――次期会長に大久保現会長が承認さる
 議案審議では平成23年度事業計画,各会計収支予算など7議案がすべて上程案どおり可決したほか,第8号議案「役員選挙」において,すでに会長選挙により選出された大久保会長が賛成多数によって次期会長に承認された.承認後の挨拶で大久保会長は「“国民のための歯科医療の充実”と“会員の歯科医院経営の安定”を大きなテーマに掲げ,次期執行部においても全力を尽くす」との決意を示した.また,次期監事には矢崎秀昭氏(東京都),秋山治夫氏(福岡県),湯浅太郎氏(千葉県)の3名が承認された.
 議案審議に続き,各地区代表事前質問と個人事前質問が行われた.質問の一覧は下記のとおり.

○地区代表事前質問の一覧
近北地区「次期平成24年度診療報酬医療・介護保険同時改定への日歯の戦略は」
北海道・東北地区「齲蝕予防におけるキシリトールガムの活用促進について」
中国・四国地区「日本歯科医師会会長選挙について」
九州地区「次期診療報酬改定への展望について」
関東地区「厚労省所管の在宅歯科医療関連補助(委託)事業の活用について」
東海・信越地区「次期診療報酬改定と保険外併用療養費制度の今後の見通しについて」
東京地区「平成22年度診療報酬改定の結果と今後の対応について」
○個人事前質問の部門ごとの一覧
器材薬剤関係……1問,広報関係……1問,中医協・診療報酬関係……5問,医療保険・制度関係……9問,地域保健・産業保健関係……6問,歯科医師需給関係……3問,学術・生涯研修・国際渉外関係……1問,情報管理・調査関係……1問,医療管理・税務関係……4問,厚生・会員関係……1問,その他……3問

 今回の地区代表事前質問と個人事前質問では,中医協・診療報酬関係や医療保険・税務制度などに関して多くの質問が寄せられたが,そのなかから一部を抜粋し概要を紹介する.

齲蝕予防におけるキシリトールガムの活用促進について(北海道・東北地区代表/西 隆一代議員)
 齲蝕予防に対しては,フッ化物応用とともにキシリトールの活用が考えられる.そこで,日歯が率先して広報活動を行い,歯科医院で専売となっている齲蝕予防効果が特に高い含有率100%のキシリトールガム購入の促進を図ってはどうか.
小谷田 宏常務理事:キシリトールの有効性は一般的にも広く知られているところであるが,販売に際し含有率100%のキシリトールガムは比較的高価であることが問題となる.広報活動としては日歯ホームページや市民シンポジウムにおいてもキシリトールの有効性について周知を図っており,今後もこうした活動を進めていく.

次期診療報酬改定への展望について(九州地区代表/永田正典代議員)
 次期診療報酬改定では介護・在宅関連への点数配分が重点的になされるものと思うが,多くの会員にとっては「診療室での治療」が主体であり,医療費の使途として優先度を再考すべきではないか,次期改定への展望をお示しいただきたい.
渡辺三雄常務理事:高齢化が進む中で「在宅」は社会的要請であるため,歯科の立場が明確に位置付けられるよう点数配分されるべきであるが,院内診療に対する点数の確保もきちんとなされるよう次期執行部へ申し送りする.

気管挿管時におけるオーラルアプライアンスの適用について(神奈川県/杉山義祥代議員)
 昨年8月31日に国立がん研究センターと日歯が正式に合意書を取り交わし,医科歯科の連携のもと,全身への健康に歯科が本格的に関わることとなった.一方,医科の手術において全身麻酔時に気管挿管が行われる際,歯牙への外傷など歯の健康が害されている現状がある.医科との連携が実現している閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の歯科用装置のようにオーラルアプライアンスを検討するなどの方策を講じていただきたい.また,オーラルアプライアンスの製作にはそれなりの技術の習得が必要だが,日歯が主催する健康スポーツ歯科指導者講習会で実技講習会を行うなど,医科からの要望があった際にすぐに対応できるような体制を作ってほしい.
森岡俊介理事:気管挿管による口腔内損傷の発生率の高さは医科でも認識しており,歯科医学会にオーラルアプライアンスによる効果について検証してもらったうえで検討したい.

TPPと歯科医療への影響について(新潟県/松川公敏代議員)
 政府は,平成23年6月までにTPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定)への正式参加の是非を判断するとしている.それについて日本医師会は昨年12月に「政府のTPP参加検討に対する問題提起」と題した見解を発表し「TPP参加によって日本の医療に市場原理主義が持ち込まれた場合,国民皆保険制度の崩壊につながりかねない面があり,そうした影響について政府は十分に検討すべきである」との考えを示したが,日歯ではどのように考えているか.
大久保会長:医療のTPP参加の可能性に対しては,当初から大きな懸念を持っていたが,これまで社会保障は自由貿易から除外されてきたことや,社会保障制度が国ごとに異なることからも,政府が医療を参加させることはないと考えている.もし,株式会社の医療機関などが参加する場合には,反対を申し立てる準備はしている.

災害時優先携帯電話の使用について(神奈川県/西野一紘代議員)
 大規模災害発生時に「災害時優先電話機」は電話を優先的に接続させることができるが,利用にあたっては事前に携帯電話事業者への契約が必要であり,その対象は法令で定められている指定機関に限られている.それにより,医療法に定める病院・診療所,薬事法に定める薬局が指定されているが,歯科関係機関は一切指定されていない.日本薬剤師会では,都道府県薬剤師会単位での契約においてすべての携帯電話回線を100%優先回線とする確約をとりつけているが,日歯はこうした現状をどのように考えているのか.また今後,国に働きかける考えはあるのか.
柳川忠廣常務理事:現在,職域代表議員や歯科関係議員による政治的アプローチを含めた準備を進めており,総務省にも働きかけている.

 なお,11日に行われた新法人への移行に関する協議では,次期執行部のもとで共済制度も含めた最終的な移行法人形態について結論を出す方針を明らかにした.予定では,6月の臨時代議員会までに「公益」か「一般」のどちらを選択するか決定し,9月の代議員会で定款変更案の決定等について承認を得るという.

(2011.03.24)

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