2 月刊『日本歯科評論』2015年9月号特集「MTAの臨床」(後に『HYORONブックレット/MTA その基礎と臨床』として発刊)にて,当時の各製品の生体材料学的・生物学的特性や臨床的有効性を集成する機会を得て以来,すでに6年以上経過した.その間の活発な製品開発とエビデンスの蓄積により,MTAは歯内療法の臨床で欠かすことのできない材料として確たる地位を定めつつあるといっても過言ではない.その一方で,多彩な新製品による間口の広がりは,臨床現場での製品選択の迷いに繋がることも事実であろう.本書はこのような背景から,MTAの近年の動向を改めて整理・検証し,臨床現場で活用するためのアップデートされた情報を読者諸氏にお伝えできることを願って,月刊『日本歯科評論』2022年1月号特集「MTA を再考する」として企画させていただいた内容を書籍としたものである. 初発製品であるProRoot MTAは米国で1998年に発売以来,逆根管充塡,穿孔封鎖,開大した根尖孔の封鎖,直接覆髄など,予知性に向上の余地があるとされるさまざまな処置に対して,従来の材料と同等以上の成績が期待されるとの多くの報告を基に,世界的に普及した.このようなProRoot MTAに対する高い評価が,その後の製品開発の気運の背景にあることはいうまでもない.すなわち,ProRoot MTAの利点を踏まえつつ改良への取り組みが活発に展開された結果,操作性向上,硬化時間短縮,色調安定性向上などを図った多彩な新製品が出現している.わが国においても,従来の粉液タイプの製品に加えて,操作性向上などを意図したプレミックスタイプ(ワンペーストタイプ,パテタイプ)の製品が続々と入手可能となっており,レジン添加型の覆髄材など特定の用途に特化した形で組成や材型が改変された製品も出現している. これらの新製品はさまざまな切り口から整理できるが,第Ⅰ章では材型別に分類してそれぞれの製品の特徴を概観した.材型でまとめられた一群の製品が基本的特徴を共有しているため,総論としてわかりやすく整理された構成となることを目指したところである.また,適応の多彩さがMTAの大きい特徴であることを踏まえ,第Ⅱ章では適応症を切り口として,それぞれのトピックに造詣の深い執筆者により,用途に応じたエビデンスや使用上のポイントなどを臨床例を交えて紹介いただくこととした.MTAを用いた天然歯(歯髄)の保存を成功に導くための「製品選択」や,「使いこはじめに
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