要介護高齢者の口腔病変アトラス
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a:皮膚表面にみられる潰瘍を伴った病変部.b:口腔内にはカリフラワー状の転移性腫瘍がみられる.c:口腔内と頬部の位置関係. 本症例では頻回に洗ったおかげで,特有の悪臭に悩まされることは少なかった.口腔側にある潰瘍部分は歯科医師と歯科衛生士が概ね1日1回,粘膜面を慎重に清拭することを中心に口腔衛生管理を実施した. 口腔に発現する他の悪性腫瘍からの転移は,筆者の経験では珍しいものではなかった.中には原発巣はそれほど大きくないのに,口腔に大きな転移性腫瘍が発生することもある.口腔に腫瘍が出現すると,途端に経口摂取が困難になるために,全身衰弱の速度が速くなる.要介護高齢者では,自ら口腔内の異常について訴えることができず,介護者が気付く頃にはかなり大きく進行している場合もみられる.悪性腫瘍が転移することは防げないが,なるべく最後まで経口摂取を継続するためには,要介護状態になった高齢者全員に定期的な口腔機能管理・口腔衛生管理を実施し,早期に口腔の異常を発見することが基本である. 末期口腔癌患者の場合,口腔を通常の場合と同様に清潔にすることは難しい.腫瘍の表面を流水で洗う(誤嚥に注意する),軽く清拭する.腫瘍から離れた部位の清掃をしっかり行う,など可能な範囲での口腔衛生管理を実施することと,刺激などを与えないように経口摂取する食物などに注意する.腫瘍本体からの出血では容易に止血しないので,血餅を誤嚥しないような体位を取らせたり,寝具が汚れたりしないように,頭頚部周囲にタオルなどを敷くという指導も行う. 医科主治医や家族との密な面談・説明を行い,予想される問題にできるだけ対応するようにするが,限界があることも十分説明しておく.bc105末期癌のワンポイントアドバイス

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