要介護高齢者の口腔病変アトラス
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 口腔カンジダ症は要介護高齢者で頻繁にみられる口腔疾患である.唾液の減少や免疫力の低下,自立清掃能力の低下によって発症する.口腔常在菌であるCandida菌が増殖することによって起こる疾患である. 写真は典型的な偽膜性口腔カンジダ症で,特徴的な白苔が口腔全体に広がっている.白苔の表層部はスポンジブラシなどで容易に剥離するが,完全に除去することは難しい.偽膜性口腔カンジダ症の場合,患者本人からの訴えは少ないか,まったくないことが多い. 病院・施設などでは訴えがないために放置され,写真のように重症になってから受診してくることもある(a,b).Candida菌はそれ自体には毒性はない.しかし,口腔内に広がることによって,Candida菌から伸びた菌糸に汚れが付着して,口腔内の汚れが顕著になる. Candida菌は菌糸を口腔粘膜に刺すように増殖し,やがて体内へ移行するといわれる.Candida菌の酵母は,血小板と同程度の大きさであり,血行移行すると体内の各臓器に拡散する.肺・肝臓・腎臓などの臓器に入り込み,内臓真菌症の原因にもなる. 軽度の場合(白苔が少量)は洗浄系のうがい薬(ネオステリングリーン®等)で含嗽したり,抗真菌成分を配合した口腔ケア用ジェルにて口腔ケアを行ったりすることでも軽快するが,中等度~重度(口腔全体に広がる場合)は抗真菌薬の投与が必要である.抗真菌薬には,併用禁忌薬があるので投与は慎重に行う. cは,2週間程度抗真菌薬の投与を行い,治癒している(フロリードゲル®10g分2(朝夕)2週間投与).36偽膜性口腔カンジダ症 90代女性

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