日本歯科評論8月号
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野東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-9-18 前歯欠損に対する補綴治療には高い審美性が要求されるのは言うまでもない.10年ほど前までは,前歯部1歯欠損に対し選べる選択肢は,部分床義歯,インプラント治療か固定性ブリッジというところであった.筆者の専門であるクラウンブリッジ補綴学領域を掘り下げると,支台歯を全部被覆冠とするか,部分被覆冠や接着ブリッジとするかといった支台装置の選択,金属を使用した前装冠とするかメタルフリーとするかという材料学的選択が求められた.これらの中から,術者は患者さんにとって最適なものを選び出し提案していた. 接着ブリッジは2008年から金属フレームでレジン前装ポンティックに限って保険適用され,治療オプションの1つと数えられた.しかし当初は脱離が目立ち,接着レジンセメントの適切使用や装着前のサンドブラスト処理の重要性が指摘されていた.また,その頃はオールセラミッククラウンが急速に普ジ(全部被覆タイプ)もとしゅんろうのた郎太俊本日本歯科評論(通刊第970号) 103及しはじめており,ジルコニアや二ケイ酸リチウムガラスセラミックスの加工精度や前装技術など,ノウハウが蓄積されていった. 一方で,2005年頃からシングルリテーナー接着ブリッジに関する報告が散見されるようになり1~4),わが国でも検証がなされることとなった. このような時代的背景による補綴治療の選択変遷をふまえ,まず最初に,筆者の経験した前歯部少数歯欠損症例への対応をいくつかご紹介する.■症例1:矯正治療+インプラント治療■症例2:シングルリテーナーカンチレバーブリッ■症例3:シングルリテーナー接着ブリッジ■症例4:メタルフリー接着ブリッジ■症例5:メタルフリー接着ブリッジはじめに症  例前歯部1歯欠損へのメタルフリー接着ブリッジによる対応とその要点

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