日本歯科評論8月号
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2₁た.このワークショップは,日本老年歯科医学会の中の口腔機能低下症に精通した会員によるコンセンサスミーティングといえるものであった.なお,口腔機能低下症とオーラルフレイルに関するワークショップ報告書は,日本老年歯科医学会のホームページで公開されている■).詳しくはそちらもご覧いただきたい. 本項では,コンセンサス形成とまではいかなかったが,ワークショップを経て得られた口腔機能低下症のブラッシュアップに関する議論をまとめてみる. 2016年の日本老年歯科医学会見解論文の公表以降,口腔機能低下症は,一定数のエビデンスを基に暫定的ながらも検査法と基準値を決定し,2018年に健康保険に導入された. そして現在,保険導入から■年半を経過し,多くの歯科医師が臨床現場で検査と診断を行い,管理や指導に取り組んできた.データが蓄積されるにつれて,さまざまな疑問や矛盾,問題点がみえてきた.定性的には検査法や診断法もコンセンサスを得やすいが,定量的に数値を確定するとなると,さまざまな意見が出て,途端にハードルが高くなる.現在,口腔機能低下症は,生みの苦しみを過ぎ,育ての苦しみの状況が続いている. そこで日本老年歯科医学会は,「口腔機能低下症に関する現時点での課題・論点を抽出・整理し,学会として取り組むべき方針を決定する」という目的で,2021年12月に,口腔機能低下症とオーラルフレイルに関するワークショップをオンラインで開催し36 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.8(2023-8) まず,主催者の日本老年歯科医学会学術委員会が論点を絞り,事前に■本の講演動画と■編の学習資料(参考文献)を27名のワークショップ参加者(以下,「参加者」とする)に提供し,その上で事前アンケート形式によって意見を求めた.そして以下の論点について,ワークショップ当日,■グループに分かれて議論し,その後,総合討論するという形式をとった.PartⅠ 口腔機能低下を改めて考えるはじめに議論の進め方特別企画口腔機能低下への対応―予防から看取りまで池邉一典₁ 上田貴之₂ 平野浩彦₃ 古屋純一₄ 岩崎正則₅ 髙橋利士₆ 水口俊介₇1 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座 教授 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-82 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座 教授 〒101-0061 東京都千代田区神田三崎町2-9-183 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科 部長・研究所 研究部長 〒173-0015 東京都板橋区栄町35-24 昭和大学歯学部 口腔健康管理学講座 口腔機能管理学部門 教授 〒145-8515 東京都大田区北千束2-1-15 北海道大学大学院 口腔健康科学講座 予防歯科学教室 教授 〒060-8586 北海道札幌市北区北13条西7丁目6 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座 講師 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-87 東京医科歯科大学大学院 老化制御学講座 高齢者歯科学分野 教授 〒113-8549 東京都文京区湯島1-5-45口腔機能低下症ブラッシュアップに関する議論

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