また,筆者が講演後の質疑応答で,「先生は間接覆髄をしないのですか?」「すべての症例で露髄させてでも歯髄を見にいくのですか」という質問を受けることがあるが,決してそんなことはない.基本的に露髄はさせないほうが良いし,不要な露髄は歯髄壊死のリスクを高めると考えている.露髄するかどうかは術前のう■の大きさに影響され,またどこまでう■を除去するかは歯髄の診断結果による.残念ながら,講演では依頼されたテーマをもとに限られた時間で話をするため,すべての内容を網羅することは難しい.詳細を知りたい方は,拙著には間接覆髄に対する考え方,う■をどこまで除去するのかについても述べているので参考にされたい■).今回の寺岡先生の論文も何でもかんでも露髄させにいっているわけではなく,あくまでやむを得ず露髄してしまった症例に対してどうアプローチするかというテーマになっていることを強調したい. 寺岡先生の内容には,新しい論文が数多く紹介されている.これを見ると,断髄というアプローチに対して,エビデンスが増えていることがわかる.たとえば,PubMedで「Vital pulp therapy」という用語を検索すると,この10年で急激に右肩上がりに論文数が増えており,世界中でVPTが注目されていることがわかる.その一方で,寺岡先生も触れているが,古い論文は1930年代からあることに気づく.近年注目されている不可逆性歯髄炎に対する歯頸部断髄(全部断髄)という治療方法も含め,VPTは古くて新しい治療方法ともいえる.近年再びVPTが注目されている最も大きな理由の■つはMTAの登場であろう.これまで歯髄保存にトライしてこなかった先生が,MTAを使用してみると良い結果が得られたことから,爆発的な流行につ日本歯科評論(通刊第967号) 21 Vital Pulp Therapy――歯髄を可及的に保存するアプローチ ……………… 寺岡 寛 ₁ 基礎編:VPTの科学 [今号掲載] ₂ 臨床編:断髄法の実際――中期症例,失敗のリカバリーと応用法 [次号掲載]Vital Pulp TherapyTherapy
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