日本歯科評論5月号
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 泉 英之20 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.5(2023-5)最近のVPTの動向に思うこと  近年,Vital Pulp Therapy(VPT)が歯科保存領域における世界的な話題として注目を浴びている.しかし,歯髄の診断を含めて,確固たる術式はいまだ確立されていないのが現状である.今回,編集部からVPTに関する企画相談を受け,筆者と同じく積極的にVPTに取り組んでいる寺岡 寛先生に文献的考察を含めた基礎的な内容のほか,臨床的アプローチの実際について■回にわたってご執筆いただいた.ここでは本企画のイントロダクションとして,僭越ながら,筆者が最近のVPTの動向について思うことを書かせていただきたい. 論文を読んで最初に感じたことは情熱にあふれていることである.保存可能な歯髄であれば,リスクをとってでも可及的にトライしていこうという考えが見える.これは筆者も同じで,長期メインテナンスで無髄歯の臨床経過を見ていると,一定の割合で歯根破折による歯の喪失を経験することから,少しでも可能性があるなら歯髄を保存したいという考えである. その一方で,歯髄保存には今も昔も賛成派と反対派があり,これからも結論が出ることはないと考えられる.その理由は,歯髄保存療法の治療成績に大きなばらつきがあり,その結果は術者の知識と技術に大きく左右されるからである.特にマイクロスコープの使用の有無が臨床結果に影響を及ぼす可能性を,ESE(ヨーロッパ歯内療法学会)が2019年のポジションペーパーで述べている■).筆者がここで強調したいのは,VPTは簡単な治療方法ではなく,高いレベルの知識と技術が求められるということである.特に,不可逆性歯髄炎に対する歯頸部断髄(全部断髄)は根管治療の代わりに気軽に行うものではないと考えている.特別企画――歯髄を可及的に保存するアプローチVital Pulp

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