日本歯科評論2月号
6/9

吉よし田だ拓たく志じ日本歯科評論(通刊第964号) 71 2017年11月にアメリカ歯周病学会(AAP)とヨーロッパ歯周病学連盟(EFP)は共催ワークショップを開催し,「歯周囲とインプラント周囲の疾患と状態」に関する新しい診断基準を作成した■).旧分類では現在・過去の状態を表す評価のみの分類に対し,新分類では治療の方向性と未来の疾病活動性を示す分類となった.また,これまで使われていた侵襲性歯周炎と慢性歯周炎の区別を廃止し,■つの歯周炎としてまとめられた. ステージ分類では病変の重症度と複雑性を分類することを意図して,ステージⅠ(軽度)からステージⅣ(きわめて重度)の■つのステージが設定された.複雑性をおおまかに分けると,ステージⅠ,Ⅱは水平性のアタッチメントロス・骨吸収パターン.ステージⅢは■mm以上の垂直性骨吸収あるいは■度以上の根分岐部病変が認め,ステージⅣはステージ■に加えて咬合崩壊,多数の欠損歯数などの複雑性が加わる. さらに,進行リスクとしてグレードA(遅い進行)からグレードC(急速な進行)の■つのグレードが設定された.グレードは歯周炎の進行の速さ,通常の治療に対する反応性,リスクファクターとして糖尿病や喫煙状況がグレード分類に影響をもたらすこととなった(図1).また,インプラント周囲疾患と病態が新分類に取り込まれることとなった. 新分類は日本歯周病学会から2022年に発刊された『歯周治療のガイドライン2022』にも掲載されているが,暫間的にこれまでの分類に新分類を併記して用いると記されている.すなわち,まず「限局型か広汎型か」,次にこれまでの分類法である「慢性歯周炎か侵襲性歯周炎か」を記し,その次にステージ,最後にグレードを記載する. ステージの考え方は,すでに悪性腫瘍(癌)の診断において広く世の中に浸透しており,歯周炎の診断にステージの考え方を取り込むことで,患者に対し歯周病の重症度をよりインパクトをもって伝えることができると思われる. 新分類の臨床的な意義としては,「ステージ分類は治療計画に関与」し,「グレード分類は歯を残す治療をより積極的に,SPT・メインテナンスをより密度濃く,医科との連携をより密度濃くする方針によしだ歯科クリニック スタディーグループ赤坂会〒145-0062 東京都大田区北千束1-45-8臨床Close Upステージとグレードによる歯周病の新分類――歯周病新分類ステージⅢ・Ⅳに対する  臨床対応のストラテジー

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る