日本歯科評論12月号
3/9

ひ樋口琢善 骨欠損は,骨壁の有無で■〜■壁性に区別されており,骨壁が多く存在するほどその中に血液が貯留し,再生の場が得られやすい(図₁).いわゆる■壁性から■壁性の骨吸収は,血餅の維持が得られにくく,骨欠損の改善が困難となる.このような複雑な骨欠損の改善には歯根膜,血餅,成長因子,フラップデザインなどが重要となってくる.また,外科的治療の適用や術式の選択に際しては,長谷川の分類(骨欠損部の歯のボーンハウジングの状態を分類,図₂)を参考に評価することもある. 加えて,どのような治癒形態となるのか,付着様式に関しても考察する必要がある.歯周外科後の治癒形態として,Melcher■)は上皮細胞の再生が他の細胞より速いため,長い上皮性の付着になる可能性を示唆したが,真の歯周組織の再生のためにはセメント質や歯根膜の回復が望ましい.そのため,上皮細胞の増殖,伸展を抑える目的でGTR法が開発され 歯周病による骨欠損が認められる場合,非外科的治療法にて対応するべきか,歯周組織再生療法を含む外科的治療へ踏み込むべきか,判断に迷う場面に頻繁に遭遇する.その背景として,骨欠損形態は千差万別で,改善にもさまざまな手法があり,また患者の治療に対する希望や意識の違いなどが挙げられる.そこで本特集では,今まで困難であった骨縁上欠損の改善も含め,さまざまな骨欠損に対する対応について,現在取り組んでいる方法を若手の先生を交え症例や文献を提示し,考察などを行っていく. 骨欠損改善のキーワードとして,「歯根膜」「血餅」「成長因子」「フラップデザイン」等が挙げられる.歯根膜および血餅に関しては以前から研究されてきた分野であるが,昨今,そこに成長因子やフラップデザインの変遷が加わることで,より効果的に骨欠損を改善することが可能となってきた.先達から教えていただいたことを加味しながら日々試行錯誤している臨床を提示させていただく.ぐちたくよし28 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.12(2022-12)はじめに骨吸収を改善するための条件と 治癒形態⽔平性を含む骨⽋損を改善するための条件を考察する──付着様式,デブライドメント,成長因子──

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る