林はやし 洋よう介すけ 歯内療法領域においてエンジン用ニッケルチタンファイル(Ni-Tiファイル)が臨床応用されて早30年の年月が過ぎようとしている.Ni-Tiファイルの研究開発は矯正用Ti-Ni製アーチワイヤーからファイルを試作し,曲げ試験およびねじり試験を行ったことがはじめとされており■),その数年後に製品として市場に登場した.現在までの30年という年月の間で製品も数多く市場に出回っているが,それだけでなく根管形成のコンセプトや手技なども時代と共にさまざまに変化し,技術的革新も起きている. 本稿では,歯内治療で最も重要な工程の■つである根管形成においてNi-Tiファイルを使用した根管形成を考えていきたい. 根管の解剖学的形態は非常に複雑であることは周知の事実であり,根管治療を困難にしている原因の■つであると断言してもよい.従来の手用ステンレススチール製ファイルなどを使用した根管形成,特に楕円形を呈する根管の場合には限界があるといわれ,ファイルの非切削部位が60%を超えるというデータもある■).また,レッジやジッピングといった根管形成のエラーは,柔軟性に乏しいステンレススチ医療法人社団IHP 高田馬場 新田歯科医院〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-4 レイカビル3F82 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.8(2022-8)▶ はじめに▶ Ni-Tiファイルの変遷臨床Close UpNi-Tiファイル時代の根管形成
元のページ ../index.html#8