日本歯科評論2022年8月
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髙たか山やま祐ゆう輔すけ図₁ ブラックトライアングルの発現要因. 他の前歯部空■歯列と同様に,前歯部におけるブラックトライアングル(gingival black triangle : GBT)は審美的な問題に限らず,食渣やプラーク停滞の原因になり,歯と歯周組織に対し悪影響を及ぼすことが考えられる. ブラックトライアングルが発現する要因は複数の項目が挙げられ(図₁),また複合的に要因が絡んでいることが多く,治療法の選択肢も修復補綴治療,外科を含む歯周治療,矯正治療と多岐にわたる■, ■). 以下に図₁に示した発現要因を解説する. 歯根間距離が広がるにつれ,ブラックトライアングルの発生率が増加し,距離が■mm以上の場合,歯間乳頭の存在は期待できないとされている■).また歯間部歯槽骨頂からコンタクトポイント間の距離が■mm以下の場合,ほぼ100%の確率で完全な歯間乳頭が存在したが,■mm以上になると乳頭喪失の割合が多く認められたとしている報告がある■).歯周疾患によるアタッチメントロスによるブラックトライアングルの発生は,歯周炎によるアタッチメントロスだけでなく,過度な歯間清掃用具の使用によるものも含まれる.歯肉のバイオタイプに関しては,歯肉辺縁形態がスキャロップ状で薄い歯肉の状態,また歯冠形態が尖形の場合,歯根間距離が他の形態と比べ大きくなる傾向があるために,ブラックトライアングルの発生が起きやすいと考えられている■).そして,歯科治療の影響として,Kurthらによると,成人矯正患者の38%にブラックトライアングルが発現すると報告されている■). 以上のことから,予知性の高い治療結果を達成するためには事前に必要な診査診断を行い,病因を把握し,それに対応するための治療計画立案を行う必要がある.66 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.8(2022-8)・歯根間距離・歯間部歯槽骨頂からコンタクトポイント間の距離・歯周疾患・歯肉のバイオタイプ・歯の形態・歯列矯正治療新百合ヶ丘南歯科〒215-0021 神奈川県川崎市麻生区上麻生1-3-5-202コンポジットレジン修復と補綴治療でのアプローチ

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