日本歯科評論2022年8月
4/9

矢や野の圭けい介すけ 近年,矯正治療に対するニーズの多様化により,矯正治療を行う一般開業歯科医が増えている.その中で本特集のテーマである空■歯列へのアプローチは,難易度の低い症例に捉えられる傾向にある.しかし空■歯列となる原因は多様であり,主には歯数や歯冠形態の異常,習癖,歯冠幅径と歯槽基底の不調和に起因しており,原因から導かれる治療法の選択肢を誤ると,たちまち自ら症例の難易度を上げてしまう恐れがある.われわれ歯科医師が共有する治療のゴールは,あくまでも適正な犬歯関係とアンテリアカップリングなど解剖学的に正常な咬合と機能,そして理想的な審美性の改善であり,本稿ではその点をふまえたうえで空■歯列へのアプローチを考える. 前歯空■歯列の改善は,まず,審美的な改善と機能的な回復の双方を矯正治療単独で獲得できるかを診断しなければならない.その際に,どちらか一方が達成できないのであれば,修復や補綴治療の併用を検討することになる. たとえば,歯数や歯冠形態の異常を伴う空■歯列弓の場合は,審美面は言うに及ばず,機能的にも犬歯関係やアンテリアカップリングが獲得できないことが多く,修復や補綴治療の介入を検討することが多い.もう少し敷衍すると,矮小歯など歯冠形態の異常や歯数の問題は,上下前歯の歯冠幅径比(anterior ratio,49頁を参照)の近遠心的不調和を生ずるため,前歯部の空■を閉じようとすると適正な犬歯関係の獲得が困難となり,ガイダンスの欠如に繋がることがある. その歯冠幅径の不足を矯正だけで強引に解決しようとすると,前歯部の歯軸傾空隙歯列の原因・歯数や歯冠形態の異常・習癖・歯冠幅径と歯槽基底の不調和42 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.8(2022-8)田園調布ヴェルデ矯正歯科〒145-0071 東京都大田区田園調布2-62-5東急スクエアガーデンサイト南館3Fはじめに診断時の留意点矯正医による診断とアプローチ

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る