アドバンスド デンチャー テクニック
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図3 中心咬合位と偏心咬合位における咬合調整を行うが,基本的には咬合紙を用いて早期接触部位を検出し,人工歯を削合する. 図4 親指と人差し指を上顎臼歯部頰側面に当てがい,咬頭嵌合位でのタッピングや滑走運動時の残存歯や義歯の振動を触診することは,慣れてくると非常に効率的な操作である .を繰り返す(図3).ただし,親指と人差し指を上顎臼歯部頰側面に当てがい,咬頭嵌合位でのタッピングや滑走運動時の残存歯や義歯の振動を触診することは,慣れてくると非常に効率的な操作である(図4). タッピング運動では,最初は比較的ゆっくり閉口させ,顎位の僅かなズレや早期接触を検知する.大きな早期接触がなくなると,通常速度のタッピング運動で咬合調整をさらに進める.なお,30μmの咬合紙では臼歯1歯に対し1点以上の咬合接触点が,すべて突き抜けていることが望ましい. 通常,パーシャルデンチャーでは中心咬合位で残存歯と人工歯が均等の咬合接触を保つように調整する.咬合採得時に咬合堤の軟化が不足していると,粘膜の被圧変位により浮き上がりに気づかず咬合器装着が狂う場合がある.咬合が高い場合には技工上の誤りを疑うのではなく,まずは診療室での咬合採得ミスを疑い,修正に努めなければならない.咬合挙上等をしていなければ,義歯の未装着時と装着時で,残存歯の咬合接触状態に相違がないことが重要である. 次に偏心位において咬合調整を行うが,多数歯が残存し偏心運動時の滑走を誘導していれば,残存歯同士による咬合接触を優先する.偏心運動時に残存歯によるガイドを妨げることがないよう,人工歯は対合歯と離開させるか同時に接触させる. 偏心運動時では,同じく義歯のわずかな回転や振動と,咬合紙による印記や咬合紙の突き抜け程度から,咬合干渉部位とその程度を推測する.義歯の維持力が少ない場合や人工歯の材質により咬合紙の印記が不十分な場合では,人工歯の咬合面にオクルーザルインディケーターワックスを併用することで強い咬合接触部位を特定できる(図5). 一方,片顎無歯顎,すれ違い咬合,咬合挙上症例など残存歯による咬合接触が認められない症例では,基本的には全部床義歯の咬合調整に準じ,残存歯も含めた形でのフルバランスドオクルージョンとなるように調整する(図6). Ⅳ 義歯装着から始まる補綴治療  145

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