アドバンスド デンチャー テクニック
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1  義歯の試適 有床義歯の臨床において,義歯の装着からメインテナンスまでの義歯調整は,誰もが日常的に特段に意識することなく,患者の苦情や訴えに対して臨機応変に対応している. しかし,だからこそ診査の見落としや細微な調整の欠如により,患者に余計な苦痛を強いていることがあるかもしれない. そこで,装着時の確認,調整事項や義歯装着直後に起こりやすい不快事項,しばらく経過してから発現する問題点等について改めて整理し,満足度の高いパーシャルデンチャーの提供を目指したい. まず,義歯装着時の確認事項であるが,十分な診査,診断を行い,義歯の設計原則を遵守し,精度高く製作されたパーシャルデンチャーであれば,装着時に多くの調整を要することはない. 特に機能的咬合印象(FBI)1〜4)を行い製作した義歯であれば,技工室より届けられた状態のまま無調整で装着することも可能である5,6). しかし一般的には,臨床操作や技工操作上で生じた小さな誤差が義歯製作過程の中で蓄積されるため,義歯装着時には何らかの調整が必要となる場合が多い.まずは技工室から届けられた状態の義歯床内面をよく触診し,レジンのバリや小突起がないことを確認する. 図1 パーシャルデンチャーを口腔内の所定の位置に試適し,レスト,クラスプ,連結子,義歯床の浮き上がりがないことを確認する. 図2 最初はシリコーン系の適合試験材を使用し,手指圧による適合試験を行い,義歯内面の著しい不適合箇所があった場合には削除調整する.  完成したパーシャルデンチャーを口腔内の所定の位置に試適し,レストとレストシートの適合を確認する.不適合であれば,咬合紙やオクルーザルスプレー,適合試験材を用いて,可撤性支台装置と支台歯との間に当たりがないかを診査する.適宜,調整を行い,レスト,クラスプ,連結子,義歯床の浮き上がりがないことを確認する(図1).2  手指圧による適合試験 次に適合試験を行うが,義歯装着時の適合を診査する場合には,シリコーン系の適合試験材を使用する.最初は手指圧による適合試験を行い,義歯内面の著しい不適合箇所があった場合には削除調整する(図2). 一般的には,精密印象採得時にトレーや筋形成時のコンパウンドが強く当たっていた部位や,リリーフをしていない骨隆起部,顎舌骨筋線や前・後顎舌骨筋窩,上顎結節頰側部等に当たりがみられることが多い.3  咬合調整 中心咬合位と偏心咬合位における咬合調整を行うが,基本的には咬合紙を用いて早期接触部位を検出し,削合144義歯装着時と装着直後の問題点1.義歯装着時の確認事項1

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