日本歯科評論7月号
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岡おか本もと基もと岐き₁ 林はやし 美み加か子こ₂診療ガイドラインから考える深在性う蝕への臨床対応 近年,国内外でVPT(Vital Pulp Therapy)に関するさまざまな臨床研究や症例報告が発表されており,歯内療法領域の最も関心の高い分野となっている.直接覆髄の歴史は長いものの,露出した歯髄のマネジメントや直接覆髄後の治癒予測は難しく,う蝕が原因で露髄した場合,わが国では多くが抜髄適応とされてきた.しかし,歯髄の高い創傷治癒力や細菌や感染に対する応答などの知見が蓄積され,歯髄の治癒・再生に関する理解が深まったことと,優れた生体親和性と封鎖性を示すケイ酸カルシウム系セメントが登場することで,VPTは新たな局面を迎えている.近年では歯根が完成した永久歯に対するVPTが根管治療に代わる可能性や,さらには術前には不可逆性歯髄炎と診断された歯に対するVPTの有効性が論じられるようになり,その可能性が大きく広がりつつある.ここでは「究極の歯髄保存」といえる症例を供覧し,実臨床と研究の両面からVPTの将来を展望する. まず,VPTに関するEuropean Society of Endodontology(ESE)のポジションステートメントにおいて中心的な役割を担ったDuncan先生とともに査読大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座 ₁助教 ₂教授〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-8日本歯科評論(通刊第969号) 65特 集究極の歯髄保存Ⅰはじめに現時点における究極の歯髄保存症例――これからの展望5.歯髄保護

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