日本歯科評論9月号
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 新型コロナウイルス感染症の感染経路は“接触感染”と“飛沫感染”であることから,2021年■月の『ニューヨークタイムズ』に,歯科医師,歯科衛生士が新型コロナウイルス感染症の感染リスクの高い職業として掲載された.さらに,歯科受診が新型コロナウイルス感染症の患者の感染リスクになると危惧された.ワクチンが出回る前のイスラエルの報告では,508人のSARS-CoV-2陽性患者を962人の陰性歯科医療従事者が治療を行うと,■人の歯科医療従事者が感染したことが明らかとなった.感染率は0.7%であった■). 逆に,43人のSARS-CoV-2陽性歯科医療従事者が507人の陰性患者を治療すると■人の患者が感染したことがわかった.感染率は0.6%であった.患者から歯科医療従事者,歯科医療従事者から患者への感染は,決して起こらないわけではない.しかし日本においては,歯科受診によるクラスターが発生し日本大学松戸歯学部障害者歯科学日本大学松戸歯学部障害者歯科学₁),₂)₁),₂) 感染免疫学〒271-8587 千葉県松戸市栄町西2-870-1〒271-8587 千葉県松戸市栄町西2-870-1 感染免疫学₂)₂)日本歯科評論(通刊第971号) 117た報告は極わずかである.これは,新型コロナウイルス感染症が蔓延(コロナ禍)の前から,歯科医療者や歯科医療機関が歯科治療に対して徹底した感染対策を行ってきた結果と考えられる.国によっても,院内感染対策の導入はまちまちである.口外バキュームを導入していなかった国々では,COVID-19以降その導入が始まった.COVID-19をきっかけに,歯科医療における院内感染対策は向上しつつあると考えられる. 一方で,コロナ禍になって少し経過したころに,職場の共同洗面所での“歯みがき”が起因と推察された新型コロナウイルス感染症のクラスター事例がいくつか報道された.このことをきっかけに“歯みがき”と新型コロナウイルス感染症との関連についてメディアやSNSで多くの情報が発信された.平成28年度歯科疾患実態調査において,国民の95%が毎日歯を磨いていた.コロナ禍以降の令和■年度では〜毎日行う“歯みがき”に関する感染対策の再考〜〜毎日行う“歯みがき”に関する感染対策の再考〜歯科医療従事者における感染対策感染対策歯みがきにおけるSARS-CoV-2の感染SARS-CoV-2の感染■)■) 野野■■本本■■■■たかとたかと■)■) 泉泉■■■■福福■■■■英英■■■■信信■■■■■)■)遠遠■■■■藤藤■■■■眞眞■■美美■■ポストコロナにおけるポストコロナにおける歯科医療の院内感染対策について歯科医療の院内感染対策について(Ⅱ)(Ⅱ)ⅠⅠ歯科医療従事者におけるⅡⅡ歯みがきにおける

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