日本歯科評論9月号
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木きノの本もと喜よし史ふみ大阪大学大学院歯学研究科臨床教授医療法人豊永会 きのもと歯科〒564-0072 大阪府吹田市出口町28-1 ラガール豊津1F日本歯科評論(通刊第971号) 89 前回までさまざまな感染制御の方策について述べてきた.今回は感染源,特に歯冠部から根管口にかけてのう■を除去するときに考慮している内容と歯肉縁下う■に対する処置について解説する.目の前のう■を除去するだけでなく,う■を除去した後の形態や処置を事前に想定しておくことが先を見越した臨床につながる. 感染根管において根尖病変が発症する原因は,根尖部における感染の根尖孔外への波及である.したがって,根尖付近の感染源の除去が感染根管治療の目的となる.しかし,“どの部位の感染を除去しなくてはならないか”と考えると,根尖付近だけでなく,根管内のすべての感染物資の除去が必要である.さらに,歯冠部の感染(主にう■)が残存したままの状態でよいはずはなく,治療対象の歯に存在するすべての感染物質を除去する必要がある. 根管形成におけるクラウンダウン法とは,歯冠側の根管口付近から大きなテーパーの器具で形成を進めて,順にテーパーの小さい器具を使用して根尖側方向に形成する方法である(図1).根管を根管口付近から形成することにより彎曲が緩和できる,ファイルの先端部での切削を避けることで食い込みによる破折が予防できる,切削片の根尖孔外への押し出しが予防できるなどの利点がある.ニッケルチタンファイルは1990年代に使用されるようになった.最初は手用器具として発売されたニッケルチタンファイルであるが,その柔軟性のため切削効率はステンレスファイルに比べ劣っていた.そこでエンジンで連続回転させて使用する,いわゆるロータリーファイルとし感染除去のクラウンダウン的発想5. 歯内療法におけるう■除去に関するエトセトラ

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