日本歯科評論9月号
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坪田 本企画の最後に,発表者全員でBTAテクニック®の魅力についてディスカッションしたいと思います. BTAテクニック®は,一見すると従来の補綴学,歯周病学に反する考え方なので,なかなか受け入れらませんでした.当初は反対意見も多く,ひどく罵倒されたこともありましたが(笑),最近はそういうことはなくなってきました.まず,先生方のBTAテクニック®を取り入れたきっかけは,どういう理由でしたか?石田 私は2014年にアンチエイジング歯科学会に参加した時に審美歯科BTA研究会を知って興味を持ち,勉強会に参加させていただきました. 実は自分の患者さんで治療をした後,長年経過をみているケースがありました.₂₂が舌側転位をしていたため審美性を回復させるために,メタルボンドの補綴をハーフポンテック様にして歯肉を押しながら審美的に回復を行っていたのですが,毎年カリエスにならないのか,歯肉と歯の間に隙間が出来ないのかと少々ドキドキしながらメインテナンスをして見守っていたのです(図➊・図➋). 研究会に参加させていただいて坪田先生の症例の数々と,どうしてこの手法が維持されて成功するのかという理論を知り,目から鱗,長年の疑問がパッと解決し衝撃を受けたことを覚えています.下野正基先生の病理学的な解説も大変興味深く,有意義に勉強会に参加させていただいておりました.私の患者さんの補綴装置も,歯頸ラインは17年未だに歯肉が下がらず維持されています.坪田 石田先生のように自分でBTAテクニック®のようなことを行っていて,なぜか時間が経っても問題が起こらず「何でだろう?」と不思議に思っている先生も結構多いのではないでしょうか? 私自身も初めは苦肉の策として行っていましたが,10年ほど経過観察していたところ,他の治療よりも意外にうまく行っていたので,その成功する理由を知りた1.BTAテクニック®を取り入れたきっかけ日本歯科評論(通刊第971号) 81図➊ 2004 年₆月,初診時の口腔内写真.白い歯を作って前歯をきれいに並べてほしいと来院された.21₁₂は失活歯であった.まず,₃₃₃の歯軸を整える目的で44を抜歯してMTMを行ってから21₁₂にはセラミッククラウンを被せる計画にした.ワイヤー矯正にてMTMを行ったところ,44を抜歯したスペースを用いて₃₃はしっかり遠心に移動できたが,₂₂は思うように前方移動ができず,きれいに並べることができなくて舌側転位が残ってしまった.図➋ 2023年,現在の状態.2006年,上顎₄前歯にメタルボンドクラウンをセットした.₂₂のクラウンはハーフポンティク様にして唇側に張り出させ,歯肉を押すように工夫した.2023年の現在に至るまで17年間,₂₂は歯肉も下がらず,カリエスにもなっていない.むしろ通常のメタルボンドである1の歯肉が少し合わなくなってきている.ディスカッション:BTAテクニックⓇ活用のすすめBTAテクニック®の臨床活用法②

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