日本歯科評論8月号
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青あお木き隆たか宜よし 前歯部の補綴治療においては,機能性の回復のみならず審美性の獲得が重要課題となってくる.何らかの理由で前歯が保存できない場合,抜歯後の歯槽骨の吸収量を最小限に抑えるように繊細な抜歯術を心がける必要がある.とはいえ,歯科治療において「予測していたとおり順風満帆♪」ということはそうそうなく(いや,むしろ圧倒的に少ない……),手痛い経験を繰り返すことで,歯槽堤温存術など失敗を回避するための対策を習得しようと努力する日々の連続である. 抜歯する歯がどのような病的な状態(歯周病や歯根破折,根尖病変)なのか,抜歯窩の骨壁数はいくつあるのか,歯軸はどうなのかなど,さまざまな要因で歯槽骨の吸収量は大きく変動する.そもそも■割以上の上顎前歯は,他の歯種と違って唇側に位置しており,唇側の骨に影響を与えないように抜歯を行うことは非常に難しい(図■)■). また,唇側歯槽骨の厚さが■mm以上の部位では抜歯後の垂直的骨吸収が■%だったのに対し,厚さ■mm以下の部位では62%の骨吸収が生じたという図■ 上顎前歯は唇側寄りに位置し,中切歯の唇側歯槽骨の最も薄い部分は,歯槽骨縁から■mmの部で厚さ平均0.52mmといわれている■).研究■)があるが,日本人の中切歯の唇側歯槽骨は平均0.5〜0.6mmと特に薄い■).たとえ愛護的に抜歯を行ったとしても,骨喪失の程度を予測することは非常に難しいのである. 抜歯に至った原因や欠損歯数,欠損部位の状態,残存歯数や対合歯だけでなく,歯周炎の罹患状況や咬合力,患者の要望など,欠損補綴の選択に影響する要素は数多く,治療方針に苦慮することは多い. Profi le:2004年■月 福岡歯科大学 卒業2011年   アポロニア歯科にて院長として勤務2015年■月 アポロニア歯科を継承2015年■月 あおき歯科クリニックへ名称変更医療法人あおき歯科クリニック〒813-0016  福岡県福岡市東区香椎浜3-2-7メディコプラザ香椎浜内日本歯科評論(通刊第970号) 63 私の臨床 私の臨床Clinical EyesⅠ 欠損補綴に対する考え方と     インプラント治療を選択する場面 私の臨床 私の臨床Clinical Eyesインプラント治療に備えた抜歯窩保全のためのPartial Extraction Therapies

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